大和総研コラム

トランプ大統領のレガシー

  • 国際
  • 掲載日 : 2017年8月30日
  • 大和総研ニューヨークリサーチセンター 主任研究員 鳥毛拓馬

トランプ大統領就任直後に執筆した当コラムでは、「大統領と上下院の多数派は共に共和党であり、大統領所属政党と議会多数党が異なっていた直近のオバマ前政権と比べれば、スピード感のある政策の実施が期待できる。」と述べた(※1)

ところが、就任前から公約として掲げていた、オバマケアの廃止・置換などを含む「100日以内の立法化を目指す法的措置案」(※2)については、大統領就任から7か月が過ぎた現在でも成立しておらず、トランプ大統領と議会との間の協力関係が構築されているとはいえない。ロシアゲートなどのスキャンダルも多々あり、これほどまでのトランプ政権の停滞は予想できなかった。この調子だと、今後も議会との協力が必要な上記の公約の実現も含めて、何も決まらない (決められない) 状況が続くことも予想され、場合によっては、このまま2018年の中間選挙を迎えることにもなりかねない。

人事案件の遅れについても批判があるが、実はトランプ大統領がオバマ前大統領よりもスピード感を持って進めているとされるのが裁判官の任命である。

オバマ前大統領が就任1年目で27名の連邦判事を任命し、10名の承認を得たのに対し、トランプ大統領は就任以来、既に44名の連邦判事を任命し、このうちニール・ゴーサッチ連邦最高裁判事を含む8名が上院の承認を得ている(※3)。ここまでのトランプ大統領の数少ない功績の一つが、保守派とされているゴーサッチ氏を任命したことと言われている。この任命により、最高裁判事全9人のうち、保守派5人、リベラル派4人の陣容となった。

トランプ大統領は、過去40年間の就任1期目の大統領の中で、最も多く連邦判事を任命することが想定されている(※4)。2017年8月24日時点でも140名の連邦判事の空席があり(※5)、今後もトランプ大統領は随時連邦判事の任命を行っていくことになろう。

就任1年もたっておらず気の早い話ではあるが、トランプ大統領が多くの連邦判事を任命することが、「政権の重要なレガシーの一つになるだろう」(※6)とまで言われている。米国の連邦判事の任期は基本的には終身とされている。若く保守的傾向のある連邦判事がトランプ大統領により任命されれば、今後数十年間の米国法の形成とその軌跡に重大な影響を与える旨が指摘されている。米国でも日本でも大きく報道されてはいないところであるが、トランプ大統領のレガシーづくりは進んでいるのかもしれない。


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