大和総研コラム

中国のバブル崩壊というリスクシナリオ

  • 経済
  • 掲載日 : 2017年8月29日
  • 大和総研リサーチ業務部長 小林卓典

中国の不動産バブル崩壊は、常に指摘される世界経済にとっての重大なリスクシナリオである。IMFは8月に公開した中国のカントリーレポートの中で、中国の信用膨張が、破滅的な調整または急激な経済成長率の低下をもたらしかねない危険な軌道に入っている可能性があるとしている。また、仮に過剰な信用膨張がなければ過去5年間の中国の平均成長率は、5.5%にとどまっていたであろうと試算し、さらに現在の政策が維持されるならば、非金融部門の負債の対GDP比は、2022年までに60%ポイント上昇して、290%以上に達すると予測している(※1)

これに類する警告は、これまでにも様々な機関から繰り返しなされてきた。しかし、むしろシャドー・バンキングの拡張によって中国の非金融部門の負債は増え続けてきた。この問題の難しいところは、負債がどの水準まで増えれば破滅的な調整を強いられるのか、その明確な閾値がないことである。上記のIMFのレポートでも、過去の国際的な経験に基づくと、負債の対GDP比が100%を超えて始まった信用ブームは、みな酷い結果に終わったと抽象的に述べるにすぎない。

1980年代後半の日本の土地バブルも、リーマン・ショック前の米国の不動産ブームも、崩壊の直接的なきっかけとなったものは、中央銀行による金融引締めである。他方、現在の中国には、少なくともインフレ率に関して言えば、金融を引き締めるべき理由は存在しない。資本流出の動きが収まれば、インフレ率の低下を受けて利下げに乗り出した他の新興国に追随し、中国も金融緩和に転換する可能性がある。

その結果、バブルは膨らみ負債はさらに累積することになるだろう。これは数々の警告を受けながらも増え続ける日本の国債残高にある意味で通じるところがある。両者に共通するのは、国家に対する過大な信頼と金融緩和の効果であり、いずれかに綻びが生じれば不安定化する危うさを伴っている。


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