大和総研コラム

顧問、相談役とコーポレートガバナンス

  • 経済
  • 掲載日 : 2017年7月26日
  • 大和総研金融調査部 主任研究員 横山淳

「顧問、相談役制度は廃止すべきですか ? 」

研究者の端くれとはいえ、サラリーマンでもある筆者にとって、最近、厄介な質問がよく舞い込んでくる。

そもそも顧問、相談役は、法律上の制度ではない。各社が任意で採用している制度にすぎず、その中味は千差万別である。中には「制度」とは呼べないほど、曖昧なまま慣行化されている場合もあるようだ。そのようなものを、一律に「良い」、「悪い」と判断できるものではない。

こうした曖昧さ、不透明さが問題点の一つということはできるかもしれない。事実、経済産業省の「コーポレートガバナンスに関する企業アンケート調査結果」 (経産省CGアンケート) (※1)によれば、自社の顧問、相談役についてすら、実際に果たしている役割を「把握していない」と回答している企業が、10%超も存在している。

それでも、仮に、名称の通り、経営陣や従業員の「お悩み相談」役に留まっているのであれば、それ自体が大きな問題だとは言えない。問題があるとすれば、その報酬・待遇等が「相談に親身になってお答えします」という機能に見合ったものか、という点だろう。
顧問、相談役が、「業界団体や財界での活動など、事業に関連する活動の実施」 (経産省CGアンケートで35%の回答) や「社会活動や審議会委員など、公益的な活動の実施」 (同20%の回答) という役割を果たしている場合もあるようだ。これなら、それなりの待遇 (スケジュールを管理する秘書、円滑な移動のための社用車) も正当化されるかもしれない。
もちろん、こうした活動が、本当に社会に貢献しているか、企業としてそれを支える意義があるか、を検証する必要はあるだろう。しかし、顧問、相談役という存在が、直接、コーポレートガバナンス上の問題を生じているとまでは言えない。

それでは、顧問、相談役の何が、コーポレートガバナンス上、問題なのか ?

経産省CGアンケートでは、自社の顧問、相談役の役割を「役員経験者の立場からの現経営陣への指示・指導」と回答した企業が36%に上っている。ここでいう「指示・指導」が何を意味するかは必ずしも定かではない。それでも、直接的な「指示・指導」に到らない「忖度」のケースも含めれば、それなりの数の企業において、顧問、相談役による、ある種の経営関与が行われている可能性が示唆されているように感じられる。これが、顧問、相談役について、コーポレートガバナンス上の特に重大な問題であろう。
すなわち、代表取締役・代表執行役は、会社法上、株主総会という一種の「選挙」を通じて、株主の信認を受けなければならない(※2)。加えて、コーポレートガバナンス・コードなどに基づく各種のモニタリングの仕組み (取締役会、独立社外取締役、情報開示など) の監督下にある。
仮に、法令上の根拠を持たない任意の機関にすぎない顧問、相談役が「指示・指導」の名の下に、経営者の判断・行動に関与するとすれば、既存のコーポレートガバナンスの仕組みの外で、実質的に権力を行使する者の存在を許すこととなる。

この問題に対処するため、例えば、「退任した社長・CEOが就任する相談役、顧問等について、氏名、役職・地位、業務内容等を開示する制度」(※3)の導入や、「相談役・顧問制度を法定または任意の指名委員会・報酬委員会における諮問対象」(※4)に含めるなどの提案がなされている。
透明性や客観性を高めることは、確かに一つの解決策ではある。しかし、開示や委員会諮問といった仕組みは、形だけ導入しても十分な効果を期待することは難しい。これらを実効的に機能させるためには、市場、とりわけスチュワードシップ責任を負う機関投資家の役割が欠かせないことを忘れてはならない。


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