大和総研コラム

バーチャル株主総会の検討を

  • 経済
  • 掲載日 : 2017年6月28日
  • 大和総研政策調査部 主任研究員 鈴木裕

明日、6月29日は3月決算会社が最も多く定時株主総会を開催する株主総会集中日だ。20年ほど前には9割以上の会社が同一日に集中開催していたのに比べれば、今年はおよそ3割で、もはや集中日というほどでもないかもしれない。

集中日回避が進められた理由はいくつかある。日本版スチュワードシップ・コードに見られる通り、多くの会社の株式に投資する機関投資家には、投資先企業の株主総会議案に関する議決権の適正行使が求められるようになっており、議案を精査する時間を確保するために集中開催の緩和が求められていた。また、個人株主にとっては、集中開催によって株主総会に参加できる機会が極めて制限されることが問題となっていた。

このうち、機関投資家の議案精査時間の確保の手段としては、集中開催の緩和よりも、株主総会議案情報の早期開示の方が有益だ。すでに相当多くの会社が、株主総会招集通知の発送日を早めているだけでなく、発送前にインターネット上で開示するようになっており、機関投資家にとって集中開催の弊害は相当軽減されている。

一方、個人投資家にとっては、集中開催が緩和されたことで、総会参加の機会が広がっていると言えるだろうが、居住地によっては、株主総会参加のため長距離の移動や宿泊が必要になる場合もあり、この障害は克服されていない。そこで、バーチャル株主総会への移行を検討できないだろうか。インターネット上の中継機能を使えば、どこにいても株主総会に参加できるし、パソコンとスマートフォンで別の会社の総会の様子も見られる。質問や意見もネット上の様々な機能を使って伝達できる。多くの人の前で発言することに躊躇を感じる株主でも、ネットでのやり取りなら緊張感は小さいだろう。

生身の人間が一堂に会するリアルな株主総会では、時に個人的な関心に根差す苦情や要望が質問という形で出てくる。株主全体の利益の向上を目指す貴重な時間が浪費されているのではないだろうか。バーチャル総会であれば、ネット経由の多くの質問の中から、総会の場で回答するにふさわしいものを選べるだろう。会社側が都合のいい質問をつまみ上げると疑うのであれば、第三者的な誰か、例えば社外役員に質問の選択を任せればいい。

米国では2000年にデラウェア州会社法改正でバーチャル総会が導入されて以来、現在では20州以上でリアル総会の開催を必須とせずに、バーチャルのみでの総会開催が認められている。わが国では、書面交付や議決権行使の面での株主総会の電子化は進められているが、リアル総会抜きのバーチャル総会については、ほとんど検討されている様子が見えない。

遠隔地の株主も公平に参加でき、会場費や人件費も節約できるバーチャル総会は、株主と会社の双方にメリットが大きいだろう。


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