大和総研コラム

ニューヨーク市の公立学校PTAから求められる寄付金額はいくらか ?

  • 国際
  • 掲載日 : 2017年5月31日
  • 大和総研ニューヨークリサーチセンター 主任研究員 鳥毛拓馬

ニューヨーク市の公立学校の運営費は地域の固定資産税で賄われており、授業料は無償である。給食費や遠足代などの費用以外には、学費はほとんど掛かからない。

しかし、学校のPTAは様々な方法で寄付金を集めており、保護者にも寄付が求められる。もちろん「寄付」なので保護者の支出は任意である一方で、PTAからは望ましい一定の寄付金額 (例えば、ある学校では児童一人につき年間1,200ドル) が提示されることもある。PTAのミッションは生徒、家族、職員間のコミュニティーを構築することであるが、一番の存在意義は寄付金集めであると言っても過言ではないように思われる。寄付金をいかに集めるかにより、その学校での教育内容の充実度が変わってくるのだろう。

寄付金の集め方は、様々であり、例えば、学校名の入った衣服や水筒、傘、かばん、文房具などの販売やブックフェアによる本の販売の収益を寄付に充てるといったことも行われる。ある日突然、担任の先生からメールがあり、「学校で使う必要な教材の購入に充てるお金の寄付を今日中に行うと、マッチングギフト (matching gift) により、第三者による上乗せが行われ、寄付額が2倍になる」といった連絡が来ることもある。

PTAの最大のイベントは、年に1回行う資金集めのパーティー (fund-raising party) である。ここでは、オークションが実施され、旅行券などのギフト券や習い事の割引券、担任の先生と休日を過ごす権利などがオークションで販売される。

寄付金の使い道は、授業に使用する教材の購入、学校への劇団の招待、芸術鑑賞など様々だ。もっとも、単に他の学校とは異なる特別なイベントなどに使われるだけではなく、体育館のステージの照明やエアコン、教材の購入など、およそ、日本の公立学校であれば公費で賄うような支出も寄付に委ねられている面がある。その理由は、連邦、州、市などの公的な予算だけではこのような費用は賄えないからだ。

一例をあげると、生徒数約300人規模のある学校では、公費からの年間予算は180万ドルしかなく、そのうち99%は先生などの人件費とされている。この学校でPTAは、年間の個別の寄付金の目標額を約8万5千ドル、資金集めパーティーなどで約10万ドル、合計で約20万ドル弱を寄付金収入の予算としている。このうち、学校へのサポートに約17万ドルが使われ、残りは、PTA組織の運営費や慈善団体への寄付に充てられるとしている。

先般トランプ政権が公表した税制改革案では個人所得税における所得控除については基本的に廃止するとしたものの、学校など一定の組織 (例えば、教会、自治体、公益慈善団体など) に対する寄附金控除については存続するとしている。

もちろん、寄付は教育を対象とするものだけではないが、米国の公教育における寄付の重要性を考慮すると、寄附金控除の存続も理解することができる。


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