大和総研コラム

確定申告の効用

  • 国際
  • 掲載日 : 2017年5月17日
  • 大和総研金融調査部 主任研究員 土屋貴裕

トランプ大統領は、公的年金に相当するソーシャルセキュリティと、高齢者医療保険制度に相当するメディケアについて、大きな変更を加える様子はなさそうだ。

ソーシャルセキュリティとメディケアは、一定の納付実績がなければ受給権が得られないが、それなりに高齢化が進む米国でも積立金が減少して、制度の持続性が懸念されている。いずれ給付額を減らすか徴収額を増やすかという選択に迫られるだろう。ソーシャルセキュリティで徴収されるのはソーシャルセキュリティ・タックス、メディケアの保険料に相当するものはメディケア・タックスと呼ばれる。また、失業保険は、保険制度ながら、失業保険料は失業税だ。いずれも所得から差し引かれる負担という点は共通で、一般に「税金 (Tax) 」という呼び名が使われている。つまり、制度維持のために徴収額を増やすことは、税負担が増える感覚になる。

ソーシャルセキュリティとメディケアで支払う税金は、いずれ自分が受給者となるため、納付額と受給額のバランスが問題になる。一方、低所得者層向けの医療保険であるメディケイドは、日本で言うところの税金によって賄われる。州によって異なるが、全国的にオバマケアの一部として加入基準が緩和されて加入者は増加し、医療保険を持たない人を減らすことに貢献した。自らがメディケイドを利用する可能性もあるから制度自体は否定できないかもしれないが、自分たちの負担はフェアなのか気になるところだ。米国の確定申告であるタックスリターンの申請時には、自らの納税額が明らかになり、税金の使途を考える機会になる。結果としてオバマケアへ反対する意見もあるのだろう。

また、タックスリターンの書類作成時には、節税も考えることになる。米国で代表的な退職貯蓄制度の一つにIRA (個人退職勘定) があり、IRAへの拠出額は所得から控除され節税できることになる。自分の納税額を考えているから、税制上の優遇措置の魅力がわかり、IRAの利用が広がったと考えられる。

日本でも税制上優遇される制度貯蓄は複数あり(※1)、2017年1月に始まったiDeCo (個人型確定拠出年金) は税制上のメリットも大きい(※2)。だが、自分の負担額がはっきりしないと、優遇措置もピンとこない。確定申告などで自分の負担がわかればどの程度の優遇なのかがわかり、公的年金を補完する私的年金制度の利用も拡大する可能性がある。


このコラムと同じカテゴリの他のコラムを読む

年別

カテゴリ別