大和総研コラム

期待される国内籍外貨建て投資信託の設定

  • 経済
  • 掲載日 : 2017年5月8日
  • 大和総研政策調査部 研究員 神尾篤史

いつの頃からか、金融機関のウェブページで、外貨定期預金の金利優遇プランや外貨預金に伴う為替手数料を引き下げるキャンペーンを目にすることが多くなったように感じる。円だけではなく米ドルやユーロなどの外貨建て資産を保有することは、運用資産を多様化させることで資産運用におけるリスクを低減することなどにつながるという観点から個人的には好ましいと考えている。

また、日本銀行がマイナス金利政策を導入するなど、低金利環境が定着し、円資産での運用が厳しくなっている中でリターンを求めようとすれば、外貨建て資産の保有の検討が選択肢である。日本銀行の資金循環統計によれば、家計の外貨預金残高は2016年末に5.4兆円と2000年末よりも1.6兆円増加している。

ところで、外貨建ての運用について気になることがある。それは円を外貨に替えた資金や既に保有している外貨で外貨建て資産を購入したいという希望を持つ場合、外貨預金や外国株式・外国債券に比べて、取り扱われている外貨建て投資信託の種類が少ないということだ。国内で販売されている外貨建ての投資信託は外国籍(※1)であることが一般的であり、公募での国内籍の外貨建て投資信託が設定されていないためと思われる。

昨年、機関投資家向けに私募での国内籍外貨建て投資信託が初めて設定されたとの報道があった。国内での外貨建て投資信託の設定については、私募の場合と比べ、公募で行うには課題が多いと言われている。しかし、当面、日本では低金利環境が続くと考えられ、また、円を介さずに外貨のまま購入や換金ができた方が投資家にとって利便性やコスト面で望ましいため、外貨建て投資信託のニーズは強まる方向にあると思われる。

くしくも本年末までに、アジア地域ファンド・パスポート (ARFP) が開始される見込みである。ARFPとは、それを導入するある国で公募された投資信託を、別の国では簡素な手続きで公募できるようにする取り決めで、いわば金融商品としての投資信託の輸出入を促進させる制度である。現時点でARFPを導入することが決まっている国は、日本、オーストラリア、ニュージーランド、韓国、タイである。ARFPの開始によって、外国籍の外貨建て投資信託が国内にこれまで以上に入り込むようになれば、投信市場の活性化が期待される。国内の外貨建て投資信託の投資ニーズやARFP開始に伴う環境の変化を考えれば、国内の運用会社にとって国内籍の外貨建て投資信託を設定することが戦略になりうるタイミングであるだろう。

また、国内籍の外貨建て投資信託はARFPを活用した輸出にも活用できる。日本よりも投資信託の市場規模が大きいオーストラリアをはじめとしたARFPの導入国でのビジネスチャンスにつながる。国内籍の外貨建て投資信託の誕生を期待したい。

  • ※1 外国籍の投資信託は海外の法令に基づいて設定されたもので、国内籍の投資信託は日本の法令に基づいて設定されたもの。

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