大和総研コラム

地方創生と経済的ダイナミズム

  • 消費 / 社会
  • 掲載日 : 2017年3月1日
  • 大和総研経済環境調査部 主任研究員 市川拓也

「地方人口ビジョン」及び「地方版総合戦略」の策定期限とされていた2016年3月末から、丸1年が経過しようとしている。地方創生の取り組みとして、全国で自治体を中心に経済活性化のための各種施策が進められているに違いない。地域の経済成長は可処分所得の増加を促し、消費の伸びとともに地域の資金循環を加速させる。耐久消費財等の購買意欲拡大はライフスタイルを変化させ、さらなる需要拡大に期待が持てるようになる。経済的ダイナミズムは地域にとって大切な要素のひとつであることは間違いない。

しかし、経済的に成熟した現代の日本において、経済成長の起爆剤となるものを見出すのは容易ではない。特に人口減少とともに需要が減少する地方では、域内売上の減少は必然である。新たな企業誘致によって域外から稼ぐにせよ、税制優遇などの痛みを伴いつつ誘致競争を勝ち抜かねばなるまい。経済成長の起爆剤となるような大型施策は、地方創生策として注目される「観光」に関する資源保護の観点と対立しやすい。地方創生の推進施策を経済的ダイナミズムばかりに求めていては限界があろう。

そもそも地方創生においては、東京圏と地方圏の経済成長のギャップを埋めるというよりも、高齢化・人口減少がもたらす地方消滅への負のスパイラルを止めることに重点が置かれている。消滅回避に向け、移動手段の確保や小売店の維持、保育や医療体制の整備といった最低限必要な課題を解決し、いかに住民が納得できる活気溢れる地域を築いていけるかが問われているのである。

地域への活力付与については、経済的尺度に依存しないため、様々な手法を取り得る。先月、筆者はクラウドファンディングを活用した地方創生のレポートを執筆(※1)したが、例えばクラウドファンディングは、わずかな資金でも地域に活力を与える仕組みを提供できる。地方創生を進めるにあたっては、経済的ダイナミズムの追求よりもさらに広い視野を持って、直接的に地域住民の幸福感を高める仕組みを工夫することが肝要であると言えよう。


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