大和総研コラム

トランプ大統領の権限はそんなに強いのか

  • 国際
  • 掲載日 : 2017年2月1日
  • 大和総研ニューヨークリサーチセンター 主任研究員 鳥毛拓馬

1月20日に第45代米国大統領に就任したトランプ氏は、就任初日から矢継ぎ早に、オバマケアなどに関する大統領令やTPP離脱などに関する大統領覚書を発出しており、ビジネスマン出身のまさにスピード感が命とも言わんばかりの仕事のやり方で、オバマ前政権との違いを印象付けているように見える。

一方、筆者は、職場に近いウォール・ストリートにあるトランプ・ビルの前で、2,000人近くの人々によるデモが行われていたのを目の当たりにし、この国全体が大統領就任の祝賀ムード一色というわけではないことが実感できた。

トランプ大統領の一挙手一投足に世界の耳目が集まっているようだが、決してトランプ大統領の考えや発言の下、独断で政策が実施されるわけではない。例えば、トランプ大統領が選挙期間中に度々、「ドッド・フランク法は廃止する」と訴えていた金融規制改革などは、大統領令では実施できず、連邦議会による法改正が必要である。今後、共和党が金融規制に関する改革法案を提出することが想定されている。

米国の連邦議会は、上院と下院で構成され、日本と同じ二院制である。法案は両院可決後に大統領に提出される。大統領は、議会が可決した法案に対して拒否権を発動することができるが、上下両院が3分の2以上の賛成票によってこの拒否権を覆すことも可能とされている。

そもそも、米国の大統領には、議会に対して一般教書や予算教書などを通じて、自身が必要と考える法律を整備するよう協力を求めることができるものの、法案提出権はない。日本と異なり、連邦議会においては、法案提出権は議員のみにある。

現在、大統領と上下院の多数派は共に共和党であり、大統領所属政党と議会多数党が異なっていた直近のオバマ前政権と比べれば、スピード感のある政策の実施が期待できる。

もっとも、上院においては、野党の民主党が演説時間に制限が設けられていないことを根拠に、長時間の演説を行うことにより、法案採決の阻止や遅延を行うことができる (いわゆる、フィリバスター) 。この場合でも上院議員の5分の3以上の賛成を得られれば法案が採決されるものの、共和党は100議席中52議席しか保有しておらず、5分の3を下回る。このため、トランプ大統領や共和党が通したい法案であっても、容易に実現されないこともあり得る。

今後、トランプ大統領が実現しようとしている各々の政策に関して、最終的に大統領に権限があるのか、それとも議会に権限があるのか、また、どのようなプロセスを経て決定されるのかについても注視することで、政策がどのようなスピードで実現されていくかについての理解が深まるであろう。


このコラムと同じカテゴリの他のコラムを読む

年別

カテゴリ別