大和総研コラム

気をつけたい預貯金の相続

  • 消費 / 社会
  • 掲載日 : 2017年1月17日
  • 大和総研金融調査部 研究員 小林章子

2016年12月19日、最高裁大法廷で預貯金の相続に関する重要な決定が出た。共同相続された普通預金、通常貯金および定期貯金は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象になるとする内容で、これまでの判例を変更するものとなっている。預貯金の払戻しを行う金融実務に与えるインパクトは大きいと思われる。

この決定のケースは、以下のようなものであった。
預金者Aが死亡し、遺言がなかったため、その子である相続人B、Cの2人が、法定相続分どおり各2分の1ずつ相続することになった。遺産は約250万円の不動産があるほか、大半が預貯金であった (預貯金の内訳は、普通預金 (外貨預金を含む) 、通常貯金、定期貯金の合計約3,800万円(※1)) 。相続人Bは、Aの生前に合計約5,500万円の贈与を受けていた。

従来の判例では、預金者が死亡して相続が開始すると、預貯金は当然に法定相続分によって分割相続され、相続人全員の合意がない限り、遺産分割の対象にはならないとされてきた。このケースでは、相続人BとCは、共に預貯金を法定相続分どおりの2分の1ずつ (約1,900万円) 相続することになる。遺産分割の対象となるのは不動産 (約250万円) のみで、仮にCが全て取得しても合計約2,150万円にしかならず、生前贈与分約5,500万円とあわせれば約7,400万円となるBと比べて、公平を欠く結果となる。

預貯金を遺産分割の対象とする今回の決定の下では、仮にCが預貯金、不動産全てを取得できるとすれば合計約4,050万円となり、不公平がある程度解消できることになる。

ただし、預貯金が遺産分割の対象となれば、遺産分割が成立するまでは、原則として払戻しが認められないことに注意が必要である。もっとも、金融実務では、二重払いのリスク(※2)を回避するため、従来の判例のもとでも、原則として相続人全員の同意がなければ払戻しを認めないという取扱いをしていた。今回の判決はこのような従来の取扱いを正当化するものといえるため、払戻しを拒む局面においては、従来の実務を大きく変えるものではないと思われる。
しかし、従来の実務では、葬儀費用のためなど緊急性が高いと思われる場合には例外的に払戻しを認めるという対応も取られていたが、今後はそのような柔軟な対応は困難になると思われる。二重払いが生じた場合に金融機関の免責が認められる可能性がほとんどなくなると思われるためである。

ところで、今回の決定はあくまでも預貯金のうち、普通預金、通常貯金、定期貯金についての判断を示したものであり、これ以外の預貯金一般や、他の可分債権 (売掛債権など) にもこの判断が当てはまるかどうかについては、なお検討の余地があるかと思われる。

なお、預貯金の相続に関しては、法制審議会の民法 (相続関係) 部会において、遺産分割の対象とする方向での法改正が検討されているところであり、遺産分割前の払戻しを認める方策も議論されている。今後、今回の決定を受けて議論が進められる予定であり、動向が注目される。

  • ※1 預貯金の残高及びドル円換算レートはいずれも2013年8月23日時点のものによる。
  • ※2 例えば、金融機関が法定相続分により預貯金を払い戻したが、遺言があった場合や相続人全員の合意で預貯金が遺産分割の対象になった場合などで、先の払戻しが有効と認められなかった場合などには再度払い戻さなければならなくなる。

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