大和総研コラム

契約結婚は役に立つ ?

  • 消費 / 社会
  • 掲載日 : 2016年12月12日
  • 大和総研エコノミック・インテリジェンス・チーム エコノミスト 前田和馬

TBS系の火曜ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」が面白い。このドラマの見どころは、まず主演女優の魅力、次に劇中に出てくる数々のパロディー、加えて「契約結婚」という突飛なテーマ設定にあると筆者は思う。

このドラマは、妻は家事を行う「従業員」、夫はそれに給料を支払う「雇用主」という仮面夫婦の生活を描いたラブコメディーである。IT会社に勤める35歳独身サラリーマンは、外食中心で月9万円の食費が、自炊する妻がいることで月3万円まで削減されると試算し、経済的メリットから契約結婚へと踏み切る。倫理的・法律的な問題は抜きにして、実際にこうした契約結婚は食費の節約に繋がるのだろうか?

総務省「平成26年全国消費実態調査」によると、30代単身世帯の食費は平均42,385円、30代二人以上世帯の平均23,437円 (一人当たり) に対して約1万9千円も高くなっている。その理由は外食と調理食品 (弁当、惣菜) の出費の多さにあり、独身者の食費が高いことは統計からも間違いなさそうだ。

単身世帯と二人以上世帯の食費をより詳しく比較すると、興味深い点が3つある。

一つ目は、単身世帯は外食や調理食品の利用頻度が高いと思われる一方で、自炊するための食材費は二人以上世帯と比べて約700円しか低くならないこと。一人暮らしでは小分けの食材やカット野菜を買うことが多いが、これらは「特売の日」でも安くなりづらい。一方、通常の食材を買うと使い切れず腐らせてしまうことも少なくない。結果的に一人暮らしの自炊は割高になりがちであり、これが外食や調理食品の利用を促進させている面がある。

二つ目は、菓子類や飲料といった軽食の出費が単身世帯で多いこと。料理が面倒なために食事をお菓子で済ませてしまうことは、一人暮らし「あるある」ではないだろうか。また、コーヒー飲料の出費の多さが目立つのは、独身男性の缶コーヒー消費の多さを反映しているのかもしれない。

最後に、健康に良いイメージがある食品、具体的にはヨーグルトや果実・野菜ジュースの出費が単身世帯で多いこと。外食中心で偏りがちな栄養バランスを、これらの食品で取り戻そうと努めているように思える。また、酒類に関しては、清酒やワインといった度数の高いお酒の出費は単身世帯の方が多い一方、発泡酒・ビール風アルコール飲料の出費は二人以上世帯の方が多い。

以上の点から、独身者は食費が割高というだけでなく、偏った食生活を送っている可能性も垣間見える。外食やお菓子の消費が多く、野菜ジュースで栄養を補う食生活が変化するのであれば、契約結婚には金銭面よりも健康面でのメリットが大きいのかもしれない。お金の節約になり、健康的で美味しいご飯が食べられ、それ以外にも色々と羨ましいことが起きるドラマ上の「契約夫」に成り代わりたいと、一人暮らし独身男性の筆者は強く感じた。

[図表] 単身世帯と二人以上世帯の一人当たり食費の比較

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