大和総研コラム

VR・AR×観光で地方創生 !

  • 消費 / 社会
  • 掲載日 : 2016年12月7日
  • 大和総研経済環境調査部 主任研究員 市川拓也

2016年は「VR (仮想現実) 元年」と言われてきた。VRをより効果的に楽しむには、コンテンツに対応したHMD (ヘッドマウントディスプレイ) が必要であり、ハイエンド機種ではOculusの「Rift」やHTCの「Vive」、10月に発売されたソニーの「PlayStation VR」といった機種がある。また、スマートフォンを用いるサムスン電子の「Galaxy Gear VR」や、「Google Cardboard」にのっとった安価なVRスコープもあり、これらがVRの裾野拡大に寄与しているとみられる。

VRと言えば、ゲームでの利用が想定されるが、地方における観光振興でも活用されている。今夏、筆者が訪れた長野県上田市の上田城跡公園では、スマートフォンにアプリケーションをインストールし、複数の特定スポットに行くとCGで再現された城郭を見ることができるようになっていた。「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の一つとして世界遺産登録された佐賀県三重津海軍所跡では、VRスコープで当時のイメージ映像を見ることができる上に、隣接する佐野常民記念館内では上記「Rift」で歴史動画に“没入”できるようである(※1)。自宅に居ながらにして現地の風景が見られるVRは誘客の動機付けに、現地で過去の映像が見られるVRは歴史体験を可能とするツールとなり得る。

これらVRに対して、AR (拡張現実) は現実の世界に情報を付加するものである。以前から、長野県諏訪市の「すわなび」(※2)のように、AR機能を用いた観光案内ツールとしての取り組みはあったが、ゲーム性を取り込む動きも見られる。陣地を競い合うARゲーム「Ingress」 (Niantic,Inc.) を地域振興に用いる自治体としては岩手県や神奈川県横須賀市があるが、特に横須賀市では今年大ブレークした「ポケモンGO」 (同) を用いた試みとして、同市長が「ヨコスカGO宣言」(※3)まで行っている。地域観光を目的としたARの活用もまた、従来の観光資源に新たな付加価値を持たせることにつながろう。

VRやARによって、観光客を誘引し、満足度を高めることが可能ならば、地域の観光価値そのものが引き上げられる。飽きのこないコンテンツの作成等には費用もかかるとみられるが、実際に城などの歴史的建造物を復元させることを考えれば、導入へのハードルは遥かに低い。観光資源に直接手を加えないことから環境負荷も小さい。観光分野におけるVR・ARの実装は、地方創生につながる“リアル”な手法の一つと言えるかもしれない。


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