大和総研コラム

トップの任期の長さを考える

  • 政治
  • 掲載日 : 2016年11月4日
  • 大和総研経済調査部 シニアエコノミスト 近藤智也

4年に1度の米国の大統領選挙の投票を来週に控えて、必ずしも国民から好ましい人物とは思われていない候補者同士が、直前になっても激しい争いを続けている。一方、現職のオバマ大統領は、後任候補者のあまりの不人気故か、皮肉にもラストにかけて支持率がじわじわと高まって、足元では約4年ぶりの高水準である。2期8年間務めて再選の望みがない任期最終年は、次のリーダー (トップ) を決める選挙一色になってしまうために、現職のレームダック化が加速するケースが多い。

折しも、日本では自由民主党総裁の任期延長が議論されている(※1)。それによると、現行の「連続2期6年」から「連続3期9年」に任期が延ばされるという。安倍首相の場合、当初2018年9月までの総裁任期がもう3年間延びて、今後も国政選挙で勝ち続けることが前提になろうが、総裁つまり首相として、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを迎えられる。そして、2021年9月の任期満了まで務めると、通算の首相在職期間は約3,500日となり、佐藤政権や吉田政権等を上回って過去最長になる見込みである。ただ、メディアによる世論調査では、任期延長に対する賛否が拮抗、あるいは反対が上回るなど、必ずしも高い内閣支持率ほどの賛成を集めていないようだ。

世界を見渡すと、G7先進国首脳会議やG20金融世界経済に関する首脳会合の顔触れを見ても、毎年のように国のトップが代わった日本は例外的といえる。例えば、1980年以降の国のトップの顔触れを見ると、日本の首相が20人 (重複を除く) を数えるのに対して、米英独仏のリーダーの人数はそれぞれ4~6人にすぎず、平均在任期間は日本の約4倍という計算になる(※2)

人気のあるトップの任期が長くなるのは、国や企業など、どこの組織でも見られること。つまり、景気全般が良ければ国民の不満は高まらず、選挙に勝利して政権運営も順調であろうし、好業績が続いている時期にその企業のトップを代えようという動きは一般的に小さいとみられる。当然ながら、不人気なトップを担いだままでは、より広範な支持を得ることは難しく、様々な圧力を受けて交代を余儀なくされよう。

ちなみに、過去約100年間における米国の中央銀行トップは、現在のイエレンFRB議長が15代目であるのに対して(※3)、日本銀行総裁は同じ期間に23人 (うち1人は2度) と、首相ほど頻繁ではないものの、交代している。黒田日銀総裁の任期は、 (延長前の) 安倍首相と同じ2018年までだが(※4)、共和党のトランプ候補はイエレン議長を交代させる考えを度々示しており、大統領選挙の結果次第では、日米の中銀トップが揃って代わることになるかもしれない。

  • ※1 https://www.jimin.jp/news/activities/133439.html
  • ※2 この他に、カナダが9人の首相、そしてイタリアの首相は17人 (重複を除く) と日本に匹敵する頻度で交代している。
  • ※3 イエレンFRB議長も2018年2月3日に4年一期目の任期切れとなる (FRB理事としての任期は2024年1月末まで) 。
  • ※4 2016年10月3日の衆院予算委員会で、再任も含めて任期の問題を聞かれた黒田総裁は、「私の任期につきましては、よく認識しております。そのことと再任云々ということは全く別でありまして、これはあくまでも政府と国会がお決めになることであるというふうに理解をいたしております。」と答えた。
    http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/001819220161003003.htm

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