大和総研コラム

新電力の出だしは好調だが、市場競争は始まったばかり

  • 経済
  • 掲載日 : 2016年10月27日
  • 大和総研経済環境調査部 主任研究員 大澤秀一

一般家庭等への電力小売自由化から半年が経過した。従来の電力会社から新規参入した外部の新電力へ契約先を切り替えた家庭は約188万件に達し、外部切り替え率は全体の約3.0%となった(※1) (2016年9月末時点) 。わずか3%という見方が多いが、上々の滑り出しと評価することもできる。

好調な出だしと見る根拠の一つは、自由化で先行するEU諸国と比較しても遜色ない水準だからだ。日本と経済規模や電力需要で比較可能な国の外部切り替え率と自由化経過年数(※2) (括弧内、2014年基準) は、フランス3.7% (6年) 、イタリア8.1% (9年) 、ドイツ8.1% (16年) 、英国11.1% (24年) である。他のEU諸国においても自由化の経過年数と外部切り替え率の間に正の相関が見られるので、日本の半年で3%は好調と言ってよいだろう。

この外部切り替えした3%の家庭は、環境変化に敏感で情報収集や比較検討を積極的に行い、電力量単価 (電気料金) そのものの抑制や都市ガス、LPガス、移動電話通信などの費用との合算メリット (合計料金の抑制や手続の一本化など) を評価した利用者と考えられる。実際に電気料金に関しては、新電力と契約した家庭の5月、6月、7月分は電力会社よりも、それぞれ7.2%、4.3%、2.2%抑制された。一口当たりの販売電力量は新電力の方が5割ほど大きいことから、電気を相対的に多く消費する家庭が新電力を選択して割安な料金メリットを得ていると考えられる。ただし、新電力の一口当たりの販売電力量が少なかった4月分の電気料金は電力会社よりも17%高くなった (図表参照) 。

電力自由化に関する家庭の意識や選択行動のアンケート調査 (9月実施) (※3)によれば、1か月当たりの電気料金が5%以上安くなれば約2割の層が変更 (新電力への外部切り替え及び同じ電力会社内の料金プランへの内部切り替え) すると答えている。また、変更した者の約9割が期待するレベル以上の満足度が得られたと答えており、現状の価格差が継続すれば外部切り替えは今後も続くと考えられる。一方、電力会社もこれまで以上に電気料金の抑制に取り組むであろうし、ブランド・ロイヤリティなどから電気料金が下がっても変更しない家庭も存在する (同アンケートによれば14.3%) ため、規制料金の経過措置が終わる2020年までに内部切り替えも進むことが考えられる。

今後の電力会社と新電力の電気料金の格差を見通すことは難しいが、あえて材料を一つ挙げるならば原子力発電 (以下、原発) の稼働状況である。仮に電力会社 (の発電部門) が所有する原発の再稼働が進んだ場合、現時点で安価とされる原発電源の多くを当該電力会社 (の小売部門) が販売する蓋然性が高いので、価格格差は縮小する可能性がある。

新電力の中には原発電源を供給力の一部として積極的に調達したいと考える者もいるだろうが、そうすると廃炉費用の負担を求められる可能性が出てくる。現時点でも大半の新電力が常時バックアップ (公正取引委員会・経済産業省「適正な電力取引についての指針」 (平成28年3月7日) に基づいて電力会社が新電力に対して継続的に電力の卸供給を行うこと) を利用して、原発 (現在、再稼働している原発は九州電力2基と四国電力1基のみだが) を含めた電力会社の電源により供給力不足を補っていることを考えると、新電力に都合のよい原発電源の調達は難しそうである。

今後も引き続き外部切り替え率が向上していくには、新電力が電力会社の発電部門に頼らない事業環境を整備していく必要があるだろう。自社電源を競争力の源泉と考える新電力は価格競争力のある電源開発に取り組む意向だ。一方、販売面で新たな顧客価値の創造を目指す新電力は、ディマンドレスポンス (需要家による電力需給調整) などによるイノベーションで顧客獲得を図る計画である。新電力と電力会社の市場競争は始まったばかりである。

[図表] 新電力の出だしは好調だが、市場競争は始まったばかり
  • ※1 電力広域的運営推進機関「スイッチング支援システムの利用状況について (9/30時点) 」2016年10月7日
  • ※2 Agency for the Cooperation of Energy Regulations “Annual Report on the Results of Monitoring the Internal Electricity and Natural Gas Markets in 2014”30/11/2015
  • ※3 電力・ガス取引監視等委員会「電力小売自由化に関する消費者選択行動アンケート調査」平成28年10月7日 (金) 、資源エネルギー庁「電力小売全面自由化に係る需要家意識調査」 (未公開だが、概要は下記資料に記載されている:資源エネルギー 電力・ガス基本政策小委員会 (第1回) 配布資料5「電力小売全面自由化に関する進捗状況」平成28年10月18日)

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