大和総研コラム

配偶者の相続分はもっと増やすべき ?

  • 消費 / 社会
  • 掲載日 : 2016年10月18日
  • 大和総研金融調査部 研究員 小林章子

2016年9月30日、「民法 (相続関係) 等の改正に関する中間試案」に対するパブリックコメントの募集が締め切られた(※1)。10月18日に法制審議会民法 (相続関係) 部会の開催が予定されており、この中で、コメントを踏まえた議論が進められるものと思われる。

この中間試案で取り上げられたテーマの一つに、配偶者の貢献を相続分に反映させるための配偶者の相続分の見直しがある。では、配偶者の貢献を相続分にどうやって反映させるのだろうか。中間試案では、以下の2つの案が示されている。

第1の案は、被相続人 (亡くなった人) の婚姻時の財産と相続時の財産を比較して、財産が一定の割合以上増加していれば、その割合に応じて相続分を増やすという案である。

第2の案は、婚姻から一定期間が経過した場合に、法定相続分そのものを増やすという案である (届出などの手続きを要するかで更に案が分かれる) 。具体的には、婚姻から20年又は30年が経過した場合に、配偶者の法定相続分を、配偶者と子が共に相続する場合は3分の2 (現行2分の1) 、父母・祖父母など直系尊属と共に相続する場合には4分の3 (現行3分の2) 、兄弟姉妹と共に相続する場合は5分の4 (現行4分の3) とすることが検討されている。

第1の案では、被相続人の「婚姻時」の財産を把握する必要がある。しかし、婚姻から相続まで長期間が経過している場合、遡って婚姻時の財産状態を調査するのが困難となることは容易に想像できる。例えば預金の場合、調査の時点で銀行の取引記録の保存期間を過ぎていれば、通帳や銀行からの通知などで調べる必要が生じうる。現金や動産については更に困難である。「婚姻時」の財産の調査に要する負担は相当なものとなることが予想される。

第2の案は、婚姻期間は戸籍の記載により容易に調査できる点で第1の案より優れているが、そもそも一定の婚姻期間があれば配偶者の貢献があったものとするのは、配偶者の貢献が極めて多様である (場合によっては財産形成にとってマイナスの要素である) ことを考えると形式的過ぎないだろうか。

今回の改正の根拠は、高齢化が進み、夫婦の死別後に残された配偶者の生活保障のために取り分を増やす必要が増していることに加え、遺産の形成に貢献した配偶者については、その貢献に応じて取り分を増やすのが公平だという考え方にある。この考え方自体に異論を唱える人は少ないだろう。

しかし、具体的な紛争の場面において、貢献という曖昧な概念を第1案のように定量的に評価しようとすれば、紛争が解決するまでに手間と時間を要することになる。他方、第2案のように形式的に評価するのでは、貢献を実質的に反映させるということが本当に実現できるのか疑問と言わざるを得ない。 相続紛争が増加しつつある中(※2)、相続法の改正には以前にも増して慎重な議論が求められているといえるだろう。

  • ※1 中間試案の詳細及びパブリックコメントの募集について、http://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900291.html
  • ※2 司法統計によれば、遺産分割に関する新受件数は平成17年度で調停10,130件、審判1,869件であったが、平成27年度では調停12,971件、審判2,008件と増加している。

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