大和総研コラム

リピーターがカギを握るインバウンドの今後

  • 消費 / 社会
  • 掲載日 : 2016年10月17日
  • 大和総研経済調査部 エコノミスト 笠原滝平

日本政府観光局 (JNTO) によると、2015年のインバウンド (訪日外客数) は約1,974万人と過去最高を記録した。元々、日本政府は2020年までに2,000万人のインバウンドを呼び込むことを目標としていたが、5年も前倒しで概ね目標達成となった。インバウンド急増の背景には、ビザの発給要件緩和や免税制度の拡充、航空ネットワークの拡大、為替相場の円安方向への動きなどが挙げられる。政府目標の前倒し達成を受けて、新たに2020年4,000万人、2030年6,000万人のインバウンドを呼び込むことが目標として設定された。5年で2倍、15年で3倍までインバウンドを増やすのは、直感的にかなり高いハードルのように感じる。

この目標の実現可能性を検討するためインバウンドの現状を確認すると、観光庁「訪日外国人消費動向調査」の中に、日本への来訪回数についての質問項目がある。2013年1-3月期から直近 (2016年4-6月期) までの回答割合の推移を見ると、2013年1-3月期に7割程度であったリピーター (2回目以上) は直近では6割程度まで低下している (図表) 。これは当然だが、初めて日本を訪れた旅行者の割合が上昇したことを意味する。

2013年以降、日本政府はビザの発給要件緩和を戦略的に行っており、その結果として、初めて日本を訪れる外国人の割合が上昇していると考えられる。しかし、ビザの発給要件緩和には不法滞在増加の可能性などリスクも内在していると考えられ、インバウンドを増やすために無計画な要件緩和を行うことはできないだろう。

そこで、今後は日本のファン (リピーター) を増やす取組みがより一層重要となるのではないか。初めて日本を訪れる外国人が増加していることは、潜在的なリピーター獲得のチャンスだと考えられる。先日、観光に関するシンポジウムに参加した際、インバウンドのニーズは多様であり、買い物、畳や浴衣の体験をしたいというニーズに限らず、一部地方では自らレンタカーを利用して団体旅行では訪れづらい場所を観光するような、日本を旅慣れた外国人も多いと聞いた。初体験のニーズは一度だが、日本の魅力を理解してもらえれば、何度でも訪れてもらえる。幸いにも日本には食事や四季、歴史など一度では味わいきれないような奥深い魅力が多くある。インバウンドの更なる拡大に向け、買い物や初体験のニーズに加えて、こうした様々な魅力に触れ、興味を持ってもらうことが重要であろう。

[図表] 訪日回数の推移

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