大和総研コラム

中国にとっても悩ましいBrexit

  • 国際
  • 掲載日 : 2016年6月29日
  • 大和総研経済調査部 主席研究員 齋藤尚登

6月24日、英国の国民投票でEU離脱賛成が過半を占めたことが明らかになり、世界主要国の株式市場は急落した。こうしたなか、上海総合株価指数は前日比1.3%の下落にとどまり、週明け27日は反発し、下落分を帳消しにした。これは海外投資家の売買シェアが1%~2%と極端に低く、影響を受けにくかったことが大きい。さらに、中国の英国への輸出依存度は2%程度にとどまるなど、中国国内投資家にとってBrexit (英国のEU離脱) は対岸の火事という認識なのだろう。

しかし、Brexitは中国にとっても悩ましい問題である。

まずは、人民元レートの行方である。2005年~2014年の長期にわたり、人民元の実質実効為替レートは、概ね右肩上がり (元高) の推移であったが、2015年に入ると安定化し、直近2016年5月は元安に振れている。人民元為替制度は「通貨バスケットを参考にした管理フロート制」と説明されるが、2014年までと違い、2015年以降は通貨バスケットを強く意識した運用がなされている。さらに、ここもとの元安は、為替面で輸出をサポートするとの当局の意志が反映されていよう。

しかし、Brexitの影響で、人民元は対ポンド、対ユーロで上昇し、最大の輸出先である欧州向けの輸出環境の悪化が懸念される。世界景気の先行きに対する不透明感が高まるなか、数量・価格両面で中国の輸出に下押し圧力がかかるリスクである。一方、中国の景気に対する悲観論が台頭し、リスクオフの動きが強まれば、人民元が急落し、それがコントロール不能な元安と見做され、昨年8月、今年1月の株価急落に代表される「騒動」が再演されるリスクも高まってこよう。

さらに、中国にとって悩ましいのは、英国が果たしてきた欧州への玄関としての役割が低下するリスクである。当初、巨大な地域銀行になると目されていたアジアインフラ投資銀行 (AIIB) が、欧州主要先進国の参加を得て、俄かに国際金融機関としての体をなしたのは、英国が2015年3月に先陣を切って参加表明をしたことが大きい。今後、英国の欧州への影響力低下が生じれば、欧州は中国との関係においても独自の判断を下すようになろう。

人民元ビジネスに積極的に取り組んできたロンドンは、香港に次ぐ、人民元オフショア市場となっている。2014年10月に英財務省はロンドンで人民元建て英国債を発行し、2016年5月には中国財政部がロンドンで中国国債を発行した。EU離脱により、金融センターとしてのロンドンの競争力が低下すれば、人民元の国際化の歩みにもある程度の影響を及ぼす可能性があろう。

上海株式市場の反応とは裏腹に、中国にとってBrexitは対岸の火事では済まされないリスク要因なのである。


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