大和総研コラム

改善してきたサービス収支

  • 経済
  • 掲載日 : 2016年6月16日
  • 大和総研調査本部 専務取締役 岡野進

日本は、長期にわたって経常収支黒字を維持してきた。資源価格の大幅な値上がりの影響で貿易収支は2011~2014年度の4年間にわたって赤字となったが、昨年からの原油をはじめとする資源価格の下落により、再び黒字化してきている。一方でサービス収支は長期にわたって赤字が続いてきた。しかしながら、そのサービス収支にも改善の動きが出てきている。

国際収支統計 (財務省、日銀) によると、サービス収支改善に寄与している要素で特徴的なのは、特許権やロイヤリティーなど知的財産権等使用料の動向である。かつて2001年度以前は慢性的な赤字であったが、2002年度に黒字転換してからは着実に黒字が増加している。これをもって日本の技術水準の高さの証しとまでいうのは楽観的すぎるかもしれないが、少なくともビジネスとして知的財産権を収入にする力は増大していると言ってよいのではないだろうか。かねて指摘されてきた海外子会社からのロイヤリティー収入が大きいという事情はあるが、現在は、親子会社間を除く取引でも黒字になっており、日本企業が知的財産権を収入にすることができてきている証左であろう。受取と支払にわけてみると、2015年度の受取は4兆4,762億円にのぼっており今後も増加していく見通しが持てる。支払は2兆604億円で横ばい傾向にあるようだ。

また同様に改善に寄与している要素として旅行収支があげられる。訪日観光客の大幅な増加により旅行収支は2014年度から黒字に転換、2015年度は1兆2,731億円の黒字となった。受け入れのキャパシティーが今後の課題だが、中国をはじめアジア諸国の所得が増加し海外旅行を楽しめるようになってきていることを考慮すると訪日客のさらなる増加が見込めるだろう。

一方で、赤字が拡大している項目もある。その他業務サービスは3兆1,684億円の赤字 (2015年度) であり、近年赤字が拡大している。受取4兆960億円 (同) で横ばい傾向であるのに対し、支払7兆2,646億円 (同) となっており、後者の拡大が赤字拡大の要因である。日本企業のオフショア業務委託の増大を背景にしており、同様の背景から通信・コンピュータ・情報サービスの赤字も9,553億円 (同) に達している。企業内の様々な業務についても国際分業が進展しているということであろう。

全体的な傾向として、サービス収支の赤字は解消する方向にあり、経常収支のポジティブ要因となってきたことに注目したい。


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