本コラムではこれまで、海外のビーチリゾートとしてグアム (夏休み!グアム最前線) 、サイパン (日本人が激減したサイパンで、2020年以降の爆買い後/五輪後を考える) を取り上げたが、日本に馴染みのあるビーチリゾートと言えば、ハワイ(※1)は欠かせないだろう。ハワイは、常住人口約142万人 (2014年) 、2014年のGDPは約774億ドルで、1人あたり約5.5万ドルである(※2)。これは、日本の約3.6万ドルより高く、米国全体の約5.4万ドルよりも若干高い水準であり(※3)、GDP全体、1人あたりGDPともに1990年以降ほぼ右肩上がりに成長している。主力の観光業が堅調で、1990年以降毎年600万人以上がこの州を訪れている。2005年に700万人を超え、2014年には約818万人と過去最高を記録した。
以前のコラムで、日本人観光客数はグアムでは堅調、サイパンでは激減していることを紹介した。ハワイについては、1997年にピークの222万人を記録した後は停滞し、2009年に117万人とほぼ半減したが、その後は再び増加に転じ、2014年は約151万人と、ほぼ1990年代前半の水準まで回復している(※4)。ただ、日本人観光客数が激減した期間で、米国本土や他国からの観光客数は増加したため、ハワイへの総観光客数にはさほど影響しなかった。この点がサイパンとは異なっており、米国本土からの堅調な需要を確保しているのがハワイの強みと言える。また、近年はオーストラリア、中国、韓国などからの観光客数も伸びており、新たな国・地域からの需要の取り込みにも成功しつつあると言えよう。
順風満帆に見えるハワイ観光業だが、当局はどのように考えているのか。ハワイ州観光局 (HTA) は昨年、2015~2020年における観光業の計画をまとめ、公表した(※5)。同計画では、SWOT分析(※6)のフレームワークを用いて自州を分析している。例えば、既に確立したブランド力 (S) に期待を持つ一方で、ビジネス客の取り込み、インフラの更新、労働力や宿泊施設など供給面での質量の確保などが課題 (W) として認識されており、国際的な観光市場の伸び (O) が期待される中、競合による模倣や天災などの脅威 (T) も感じている様子が垣間見える。
全体を通して見ると、ハワイ観光業の強さとは、一年中過ごしやすい気候、自然資源と独自の文化がその本質であると考えられるが、日本人観光客のハワイに対する嗜好は他国とやや異なっている。HTAの調査(※7)によると、旅行先の選定で重視するポイントの中においてハワイが該当する項目として、米国西部(※8)、米国東部、カナダからの観光客は「リラックスでき元気が出る場所」、「ロマンチックである」、「他のどこにもない景観」などを挙げている。一方で、日本人は、「日本語が通じる」、「ショッピングに最適」が上位に並び、「ハワイ文化に触れること」に対する意識が相対的に低い。
嗜好が異なる様々な国からの観光客を受け入れるのは容易ではないが、ハワイでは日本人向けのコンテンツをコンパクトに集約し、対応していることが強みの一つなのかもしれない。日本が持続的にインバウンド需要を確保していくためには、ハワイのように、本質の強みの部分を理解し観光資源として磨き上げるとともに、各国で異なるニーズを分析し対応することも重要になるだろう。
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