大和総研コラム

メジャーリーグに見る資本主義

  • 国際
  • 掲載日 : 2016年4月27日
  • 大和総研ニューヨークリサーチセンター エコノミスト 橋本政彦

2015年から2016年にかけてのアメリカの冬は、例年に比べると非常に穏やかな天候であったようだが、それでも日本に比べて長く、辛い冬が明けたことによる高揚感は非常に大きい。また、春の訪れと同時にメジャーリーグも開幕を迎え、野球ファンである筆者にとって、春は1年で最も胸躍る季節である。

野球を現地で観戦する楽しさは日本もアメリカも変わらないが、実際にメジャーリーグのチケットを購入してみると、チケットの価格設定において日本とは大きな違いがあることに気が付く。試合を主催する各球団から公式にチケットを購入する場合でも、その値段は非常にフレキシブルに設定されている。

具体的には、座席の場所によって価格が異なるというシステムは日本とおおよそ同じだが、座席による値段区分は日本に比べて非常に細かく設定されている。また、対戦相手や日程によって価格が大きく変動する点は、日本との大きな違いであろう。人気カード、例えばニューヨークにおいては、サブウェイシリーズと呼ばれるニューヨーク・メッツvsニューヨーク・ヤンキース戦や、長年のライバル関係にあるニューヨーク・ヤンキースvsボストン・レッドソックス戦のチケットなどは高い値段で販売されることになる。さらに、同じ試合、同じ座席であってもチケットを購入するタイミングによって価格は大きく変動する。まだ全ての球団がこのシステムを取り入れているわけではないようだが、スポーツ業界においても広く資本主義的な考え方が導入されつつある。

アメリカではこうした需給を反映した価格設定が、ホテルや航空券、近年話題の配車サービスなど、日常の様々なシーンに広く浸透している。筆者が驚かされたところでは、金額が大きい住宅家賃でさえ、数日に一度という高い頻度で改訂され、契約のタイミングが数日違うだけで、その先1年~数年にわたっての家賃が変わることも珍しくないらしい。

物価が上昇することに対する消費者の抵抗感は日本でもアメリカでも変わらない。しかし、頻繁に様々な財やサービス価格の変動を目にすることで、「物価は変動するもの」という意識がアメリカでは強く根付いており、それゆえに消費者はインフレに対する防衛意識が強いように感じられる。気になるものがあればとりあえず購入し、気に入らなければ返品するというアメリカ独特の消費スタイルや、借入に大きく依存した消費構造は、インフレに対する警戒感の強さが相当程度影響していると考えられる。

メジャーリーグのチケットの場合、一般的にはチームが好調であるほど、球場に観戦しに行く人が増え、値段が上がりやすいと考えられる。一方、チームが低迷した場合、シーズン終盤のチケットは大きく値下がりする可能性もあるだろう。ひいき球団の優勝を信じてシーズン終盤までのチケットを購入しておくのが値上がり対策になると思いつつ、チームの成績が振るわず、その上チケットの値段まで下がってしまった際のショックを考えると、なかなか購入に踏み切りづらい。


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