大和総研コラム

新たな"民泊"制度策定への扉

  • 消費 / 社会
  • 掲載日 : 2016年3月30日
  • 大和総研経済環境調査部 主任研究員 市川拓也

2016年4月1日から民泊に関する“規制緩和”が行われようとしている。これまで実態の先行する民泊の多くは、旅館業法の許可を得ずに行われてきたとされるが、旅館業法の簡易宿所営業の要件を緩和することで、民泊の合法的受け皿として対応しようというものである。

民泊を旅館業法の下に置くことで、これまでデメリットとされた外部不経済の問題は限定され、既存の旅館業者との競争上の不公平感もなくなるならば、いいところ尽くめである。しかし、実際はこれで本質的な問題が解決するとは思われない。客室の延べ床面積の基準を「33 (収容定員が10名未満の場合は3.3に収容定員を乗じて得た数) 平方メートル以上」(※1)へ緩和すること等は事業者に間口を広げる効果はあるものの、旅館業法の下で許可を得るために様々な要件をクリアしなければならず、合法的に事業を始めるには参入が容易ではない。従って、民泊に期待される宿泊施設不足の解消にも、既存違法業者問題の解消にも大きな効果は期待できないであろう。

尤も上記面積基準の改正は、「民泊サービス」のあり方に関する検討会が検討してきた「早急に取り組むべき課題」への手当に過ぎず、より踏み込んだ部分についてはまだこれからである。とはいえ、既に3月15日の同検討会(※2)で、“ホームステイ型”の民泊ならば許可によらず届け出により営業を行えるようにする方針を決めた旨の報道がなされており、一部ではあるが新たな民泊制度策定への扉が開かれようとしているのも事実である。

有償宿泊については旅館業法ですべてをカバーしきれない状態にあるのは明らかであるが、他方で既存旅館業者が一方的に不利になることも避けねばならない。民泊を巡っては騒音や治安面等の問題もある中で、違法営業を放置することも適当でない。これらの課題解決は喫緊の問題として対応が求められるが、他方で一度開いてしまった扉は元に戻らないことも覚悟する必要がある。日本の将来像を変えるかも知れない大きな扉を開くか否か、開く場合には関係者の納得を得るためにどのような施策を取り得るのか等について冷静な議論が行われることを期待したい。

  • ※1 「『旅館業法施行令の一部を改正する政令案』について (概要) 」 (2016年2月9日、所管は厚生労働省) より。
  • ※2 検討会からは「『民泊サービス』のあり方について (中間整理) 」 (平成28年3月15日) が出されている。

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