大和総研コラム

規制と成長の両立。英国がFinTechに期待するもの

  • 国際
  • 掲載日 : 2016年2月5日
  • 大和総研経済環境調査部長 内野逸勢

最近、“FANG”という言葉をよく目にする。“FANG”とは、Facebook、Amazon、Netflix(※1)、Googleの頭文字を合わせたもので、一般的にはエコシステムの頂点に君臨している代表的な企業を指す。同時に英語ではFANG=“牙”を意味し、既存の伝統的な企業プラットフォームを破壊=Disruptorと位置づけるケースも見られる。さらに、“Uberification”という造語もあり、これは新たなスタートアップ段階の企業がUber(※2)のビジネスモデル (シェアリングエコノミーとオン・デマンドを中心とするモデル) を適用するつまり、“Uber化”を意味するものである。上記の企業によって、様々な既存産業のプラットフォーム自体に変化をもたらせる可能性があると言われている。特に、成長が鈍化しているあるいは低迷している産業にとってはなおさらである。

金融セクターも同様である。英国の金融セクター (銀行と保険) の対GDP比率は、2009年に8.6%とピークに達してから、その後7%前後の水準に留まっている。他の主要国の同比率は、米国6.9% (2013年) 、日本4.5% (2013年) 、ドイツ3.7% (2014年) 、フランス4.0% (2014年) となっている。同比率が一番高いスイスでは、1997年以来10%を超えていたが、2014年に同比率が9.5%となり、18年ぶりに10%の水準を割った。

英国を含めた欧州の金融機関はリーマン・ショック後、資本に対して過剰なリスク資産をオフバランス化 (デレバレッジ化) して、バランス・シートの縮小に努め、同時に、コンプライアンス規制強化の影響から業務上のコンプライアンス問題が浮上し、多額の罰則金の支払いとその対応に迫られてきた。さらに超低金利の状況下、全体の収益性が落ちている状況である。資本規制、顧客保護規制、金融商品の組成・管理に対する規制等が強化される中、現状のビジネス・プラットフォームの持続性はそれほど高くない可能性もある。

このような状況下、英国の政策を見るとある工夫がなされていると考えられる。それが金融とITを融合したFinTechの活用である。現状のビジネス・プラットフォームをFinTech導入によって、他国に先んじて、新たなプラットフォームへの転換させることを図っていると考えられる。英国政府は、伝統的なFinTechと新興のFinTechに区分し、その導入の目的としては、FinTechによって国内産業のエコシステム自体を変化させていき、国全体の成長につなげようとしている。つまり、FinTechによって産業のプラットフォームを他国より先進的に変革することでエコシステムの頂点に立とうとしているのである。この中には、規制のイノベーションでもあるRegTechも含まれている。この新たなプラットフォームをもとに、金融のビジネスモデルの変革につなげ、成長ドライバーとすることを目論んでいると考えられる。

日本では、2012年11月27日、自由民主党が発表した「J-ファイル2012 自民党総合政策集」において、金融セクターの対GDP比を英国並みの10%台に押し上げ、「業」としての金融を育成すると宣言した経緯がある。日本においても金融セクターの規制と成長のバランスを考えるうえで示唆に富む事例と言えよう。

  • ※1 インターネットを介した有料映像を配信する会社 (ストリーミングTVビジネス) 。
  • ※2 自社で車両とドライバーを保有せず、スマートフォンアプリにより配車予約可能なサービスを提供する会社。

このコラムと同じカテゴリの他のコラムを読む

年別

カテゴリ別