大和総研コラム

会計監査の品質向上に向けた意見募集始まる

  • 経済
  • 掲載日 : 2016年2月4日
  • 大和総研制度調査担当部長 吉井一洋

2015年12月17日、IAASB (国際監査・保証基準審議会) はコメント募集 (ITC) 「監査品質の強化を求める公共の利益への対応 (Enhancing Audit Quality in the Public Interest) 」を公表した(※1)。IAASBとは、国際会計士連盟 (IFAC) の中に設置された国際的な監査基準などを開発する監査基準等の設定主体である。JICPA (日本公認会計士協会) の監査実務指針の多くはIAASBの基準に基づいている。

IAASBは、会計監査人 (公認会計士) に対して、ガバナンスの責任者とのコミュニケーションを経て決定したKAM (監査上の主要な事項:Key Audit Matters) を監査報告書に記載するよう求める新しい監査基準を2015年1月30日に公表した(※2)。現在のような1枚で書かれた監査報告書ではなく、会計監査人が監査を行う上で特に注意を払った項目を監査報告書に記述する。当該基準は2016年12月15日以後に終了する期間の財務諸表から適用することとされているが、わが国ではまだ導入に向けた検討は始まっていない。

上記のビッグプロジェクトの終了が見えてきた2014年後半から、IAASBは、新たなプロジェクトとして、監査品質の向上、グループ監査、金融機関の監査に関する特別な考慮事項(※3)、会計監査人の職業的懐疑心について検討を開始した。このうち監査品質の向上、グループ監査、職業的懐疑心は、相互の関連性が深いことから一まとめにし、共同でディスカッションペーパーを公表する方向となり、冒頭のITCが公表されるに至った。

監査品質の向上は、大手電機メーカーの不適切会計問題で揺れるわが国において、その重要性が改めて認識されているところである。グループ監査は、例えば、グローバルに事業展開している大企業グループの監査であり、海外子会社・支店などの所在地の監査法人と連携して適切な監査を行うために必要な方策が検討されている。職業的懐疑心とは、会計士という職業的専門家が監査を行う上で必要とされる「疑う心」である。それを十分に発揮し監査品質を向上するために、監査法人がどのようにして、文化の育成や報酬への反映を含み、リーダーシップをとるべきか等が検討されている。監査法人の年次報告書等のあり方-例えば、監査法人の品質管理システムとその有効性に関するより多くの洞察の提供-などもテーマとして示されており、IOSCO (証券監督者国際機構) が報告書をまとめている旨も言及されている。

ITCは、財務諸表の利用者、作成者、監査委員会などをターゲットとした概要版と監査法人、会計士協会、規制当局などをターゲットにした詳細版 (本体) とが公表されており、概要版には一般的な質問、詳細版 (本体) にはより専門的な質問が盛り込まれている。コメントの締め切りは2016年5月16日である。会計士、監査法人や規制当局に留まらず、財務諸表の利用者をはじめ、より多くの資本市場関係者が関心を持つことを期待したい。


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