大和総研コラム

2月は欧州の政治リスク台頭に注意

  • 国際
  • 掲載日 : 2016年2月3日
  • 大和総研経済調査部 シニアエコノミスト 山崎加津子

2016年の欧州の3大政治リスクは、英国のEU離脱の是非を問う国民投票、難民急増問題、そしてギリシャ問題と考えられるが、これらがそろってこの2月に注目されることになりそうである。

2月18~19日のEU首脳会議の主要議題は英国問題と難民問題となる。英国問題とは、英国が2017年末までに実施する国民投票をにらんでEUに要請している4項目の改革の取り扱いである。規制緩和によるEU市場の競争力向上はEU側も受け入れやすいが、英国がユーロ圏加盟国に対して不利に扱われない保証や、EUの統合推進への参加義務の免除など、身勝手とも受け止められる内容も盛り込まれている。特に問題視されているのが、EUからの移民が英国の社会福祉給付の対象となるのは4年以上居住してからとの制限を設ける項目である。中東欧諸国のEU加盟以降、英語圏で、賃金水準が高く、労働市場の柔軟性が高い英国への移民流入が急増し、それが英国民の不満の種となっているのだが、当然ながらこの要求は移民の送り出し国である中東欧諸国の強い反発を呼んだ。ただし、経済規模でEU2位であり、また金融センターとしても、安全保障の担い手としても存在感が大きい英国がEUから離脱しないことを、EU側も原則としては望んでいる。このため、欧州委員会は1月末に社会福祉制度への著しい負担増がある場合、移民に対する社会福祉給付を最大4年間凍結することを可能とする改革案を提示して、英国に譲歩を示した。キャメロン首相はこの提案では不十分としているため、EUとの協議の行方はまだ予断を許さないが、英国とEUの妥協が成立すれば、この6月にも国民投票が実施される可能性がある。

一方、難民急増にEUとしてどう対処するかは昨年来の懸案だが、EU国境の警備・監視を強化すること、EU国境で難民が特に増えているギリシャとイタリアにEUの難民受付センターを設置すること、難民申請者をEU各国で分担して引き受けることなどが基本合意されているものの、その実施は遅れている。EUの難民対策の成果が見えない中で、各国が個々に国境管理の導入や国境へのフェンスの設置などを実施してしまっているのが現状である。また、難民受け入れに寛容だったスウェーデン、オーストリアで難民抑制措置が導入され、ドイツでも政権内から難民受け入れの上限設定を求める声が高まり、これに反対するメルケル首相の孤立が報じられている。もっとも、ドイツの連立政権は難民受け入れ反対を掲げる新政党AfD (ドイツのもう一つの選択肢) が第3党に台頭したことへの危機感から、難民問題で連立政権が解消されることはないと火消しに動き始めた。また、難民問題を理由に各国が導入した国境管理に関して、恒常的な措置となった場合、経済活動を阻害して景気に悪影響を及ぼすとの警告が産業界から増えている。EU各国が難民問題を巡って対立を続けることの危うさを共通認識とすることができるか、2月のEU首脳会議の行方が注目される。

なお、ギリシャは2015年8月に最大860億ユーロの第3次金融支援が決まり、第1回融資として2015年末までに計214億ユーロの支援を得た。この間、金融市場からの注目度は大いに低下していたが、「2016年の早い段階に」財政健全化の取り組みに対する審査結果の発表が予定されている。この審査に合格することは、第2回融資を受けるための条件であるだけでなく、債権者側との債務削減交渉を始めるための前提条件ともなっている。なお、債務削減が実現すれば、IMFからの支援再開への道も開かれる可能性が高まる。これまでの経験からこの「予定」が延びる可能性はかなり高いが、2月以降、ギリシャ問題が改めて注目されることになると予想される。


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