大和総研コラム

パリ協定 (COP21) の長期削減目標の取り扱い

~国内の地球温暖化対策計画での意見の相違~
  • 環境
  • 掲載日 : 2016年1月20日
  • 大和総研経済環境調査部 主任研究員 大澤秀一

2015年末にパリで開催されたCOP21 (国連気候変動枠組条約第21回締約国会議) で、気候変動に関する2020年以降の枠組みとしてパリ協定 (Paris Agreement) が採択された。初めてすべての締約国 (195か国) が温室効果ガス (GHG) の排出削減等に取り組むことになるため、歴史的な合意と評価されている。

パリ協定には二酸化炭素やメタン等のGHGの排出削減だけでなく、適応 (地球温暖化でもはや免れることができない異常気象等への対応) や途上国への資金提供・技術支援等が規定され、実効性を高めるための国際的な制度も盛り込まれている。今後、同協定は各国政府の署名や議会等の批准を経て、2020年までに発効する見通しだ。

日本政府も2016年4月に国連本部 (ニューヨーク) で予定されている署名式典や、その後の批准、対策・施策の実施に向けて準備を始めた。パリ協定は、地球温暖化対策推進法の範囲内で実施し得る国際約束として、国会の承認と新たな立法を要しないものと考えられている。ただし、同法の下で現在、策定が進められている地球温暖化対策計画には、パリ協定の内容を反映する必要がある。地球温暖化対策計画はCOP21に先立ち国際誓約した「国内GHG排出量を2030年度に26% (2013年度比) 削減する」目標を達成するために、国や地方公共団体、事業者、国民それぞれの責務と役割や対策・施策が示される。

ここで、パリ協定で規定されている、長期GHG削減目標の取り扱いが論点の一つに挙がっている。同目標とは、地球温暖化による気温上昇を産業革命前から2℃未満に抑制することを目指して、今世紀後半に人為的なGHG排出量と吸収量を均衡させることである。世界全体のGHG排出量が速度を上げながら増加し続けている現状を客観的にみれば、同目標は理想に近いものといえる。論点とは、地球温暖化対策計画の中に同目標を含めることが適切かということだ。

現在の環境基本計画 (第四次、2012年4月27日に野田内閣が閣議決定) には、気温上昇を2℃以内にすることを目指して、2050年までに80%のGHGの排出削減を目指すことが明記されている。国家計画とパリ協定を整合させるのであれば、地球温暖化対策計画にも「2050年までに80%削減する」という表現や「今世紀後半までに人為的なGHGの排出と吸収を均衡させる」といった長期的な目標を含めることは適切なことと思える。

一方、現在の環境基本計画は、その後の政権交代等によってゼロから見直されたエネルギーおよび環境関連動向が反映されていないため、すでに役割を終えていると考えることもできる。また、今世紀後半の長期GHG削減目標は、地球温暖化対策計画の計画期間 (2016〜2030年度の見込み) から外れているのだから、そもそも明記する必要はないとする主張にも一定の合理性がある。理想を掲げたパリ協定を、実現性が優先される国内計画に反映させるのは容易ではない。地球温暖化対策計画の策定と実行に責任を有する安倍内閣は、3月末までに閣議決定を行う見込みである。


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