大和総研コラム

あとを濁さない、きれいな"独立"はありうるか

  • 国際
  • 掲載日 : 2016年1月19日
  • 大和総研経済調査部 シニアエコノミスト 近藤智也

既存の組織・枠組みから抜け出ようとすると、周囲と摩擦や軋轢を生んでしまうケースが多いようにみられる。その端的な例が国家からの分離独立ということになろう。例えば、現在、EUやユーロ圏といった大きなまとまりを形成している欧州の場合、第二次世界大戦後、イギリスのIRAやスペインのETA (バスク祖国と自由) といった武装組織による動きはあったものの、様々な形で独立運動が表面化してきたのは、米ソ対立という冷戦構造が崩れた後になろう。

90年代には、旧ソ連崩壊につながっていくバルト三国の独立、ユーゴスラビア解体における血で血を洗う内戦などが起きたが、2014年のスコットランド独立を問う住民投票や2015年のスペイン・カタルーニャ州の議会選挙、2017年までに予定されているイギリスのEU離脱を問う国民投票など、最近欧州で見られる動きは平和的な形式を取っている。それでも、これまでの枠組みを守ろうとする方と、それを壊そうとする方の対立は厳しいものがある。背景に、何世代にもわたる長い歴史の中で醸成された民族や文化、宗教、経済など複雑な対立構造が絡んでいるために、全員が納得するきれいな解決は難しいとみられる。

一方、経済的な“独立”を考えてみた場合、起業によってもたらされる市場の新陳代謝は、経済活動を促す、あるいは生産性向上を図る観点から必要不可欠な要素であろう。例えば、経済の活力が失われた日本では開業率・廃業率の低さが問題視され、政府は成長戦略の中で、開業率を現状の約5%から米英並みの10%台に引き上げることを目標に掲げている。当然ながら、独立を図った全ての人がビジネスで成功するわけではない。これも日本でよく指摘されてきた点だが、一度失敗した人に冷たく、再チャレンジする機会が少ないといわれる。適切な資源 (労働) 配分を図るには、柔軟な雇用関係構築のための法改正、円滑な労働移動を実現するための転職市場の整備などが重要になってこよう。

また、米国でも、リーマン・ショック後、若年層の労働・所得環境が著しく悪化したために、親元からなかなか独立しない現象が見られた。この結果、世帯数の伸びは鈍化し、米国の住宅市場の回復が緩慢なものにとどまる一因となったのである。

2016年は世界的な株価下落など冴えないスタートになってしまい、日本でも様々なニュースが流れている。人々に娯楽を提供する芸能の世界でも、最近、大きな騒動が起きている。顛末の詳細は存じないが、独立するのか残留するのか、いずれにしろ周囲に迷惑をかけたのは間違いないだろう。筆者がたまたま彼らと同年代であるためか、義理人情、しがらみに苦悩する点にsympathyを感じる一方、デビュー25年の彼らならもう少しきれいな表現方法はなかったのだろうかと思う次第である。


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