大和総研コラム

金融審のディスクロージャーWG 開示制度の大改革なるか ?

  • 経済
  • 掲載日 : 2015年11月19日
  • 大和総研金融調査部 制度調査担当部長 吉井一洋

2015年11月10日に、金融審議会の第1回ディスクロージャーワーキング・グループが開催された。これは「『日本再興戦略』改訂2015」で挙げられている「統合的開示に向けた検討等」を受けてのものである。「検討等」では次のように述べている。

「企業の情報開示については、投資家が必要とする情報を効果的かつ効率的に提供するため、金融審議会において、企業や投資家、関係省庁等を集めた検討の場を設け、会社法、金融商品取引法、証券取引所上場規則に基づく開示を検証し、重複排除や相互参照の活用、実質的な監査の一元化、四半期開示の一本化、株主総会関連の日程の適切な設定、各企業がガバナンス、中長期計画等の開示を充実させるための方策等を含め、統合的な開示の在り方について今年度中に総合的に検討を行い、結論を得る。」 (「『日本再興戦略』改訂2015」pp.44-45)(※1)

筆者は、「『日本再興戦略』改訂2015」が公表された際に、「金融審議会において」検討の場を設けるという記述に、驚きを感じた。

現在、上場企業は、取引所規則等に基づく決算短信、会社法に基づく事業報告書・計算書類 (招集通知に添付) 、金融商品取引法 (金商法) に基づく有価証券報告書等での開示を行っており、企業側にも利用者側にも開示の重複感がある。公認会計士・監査法人による監査も会社法の開示書類の監査と金商法の開示書類の監査とに分かれており、これらの一元化を図るべきという指摘もされている。しかし、会社法は法務省、金商法は金融庁が管轄する現況において、会社法と金商法の開示の統合を視野に入れた抜本的な調整は難しい状況であった。

金融審議会が主導して見直すということは、上場会社の情報開示が、金商法を中心とした体系に組みなおされる千載一遇の好機到来かと、筆者は (「本当か」と半ば疑いながらも) 期待した。簡単に言えば、会社法が上場会社だけでなく非上場会社・中小企業も対象としていることを考えると、上場会社の情報開示は、投資家保護を目的とする金商法をベースにすることが望まれるからである。例えば、有価証券報告書が、株主総会前でなく後に開示されているという実務などは、改善すべき点であろう。しかし、第1回の議論を見る限り、監査の一元化などを主張する意見はあったものの、それぞれの制度にはそれぞれの制度の目的がありその役割を果たしている、現行の開示制度・実務で問題はないといった主張が根強いようである。

例えば、招集通知に有価証券報告書を添付すると印刷や郵送コストが大きいという、もっともな指摘がある。頁を減らすために、有価証券報告書の開示が削られたのでは本末転倒である。しかし、例えば、招集通知に添付する事業報告書・計算書類と有価証券報告書の開示内容を、後者をベースに統合して、投資信託の交付目論見書と請求目論見書のような位置付けにすることも考えられる。このようにすれば、招集通知には要約版の開示書類を添付し、有価証券報告書は株主総会前にEDINET等で開示して、株主から請求があれば印刷版を送付するといった対応も可能となろう。会社法と金商法の監査の一元化も図れる。併せて定時株主総会を7月開催 (3月決算会社) とすれば、開示書類の作成・監査・分析にかける時間的な余裕も増えるであろう。第2回以降の議論に期待したいところである。

  • ※1もともとは、経済産業省が主催した「持続的成長に向けた企業と投資家の対話促進研究会」での検討がベースとなっている。座長は一橋大学の伊藤邦雄教授で、2015年4月に公表された同研究会の報告書はいわゆる伊藤レポートの第二弾と位置付けられている。

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