大和総研コラム

大筋合意後も気を抜けないTPP

  • 国際
  • 掲載日 : 2015年11月9日
  • 大和総研経済調査部 エコノミスト 新田尭之

10月5日、日本や米国など12ヵ国が参加した環太平洋経済連携協定 (TPP) 交渉が大筋合意に至った。次のステップである各国内の承認が得られれば、TPPは正式に発効する見込みである。発効後のタイムスケジュールは、国・品目毎に異なるものの、協定内容に基づき、参加各国で貿易障壁の撤廃や通商ルールの統一などが進められる予定である。

他方、一部の国において、TPPの発効から生じ得る経済効果をかき消しかねない政策が打ち出されている。以下では、排気量が3,000cc超の乗用車に対してベトナムが課している特別消費税(※1)率を引き上げようとする事例を取り上げる。

ベトナムは今回の大筋合意により、排気量が3,000ccを超える乗用車を輸入する際に課している最高70%弱の関税を10年目に撤廃することになった模様である(※2)。しかし、報道等(※3)によれば、2016年7月からベトナム政府はこれらの乗用車に向けた特別消費税率を現行の一律60%から90%~150% (排気量によって異なる) へと大幅に引き上げようとしている。したがって、関税の削減ペース次第では、特別消費税の引き上げを受け、従来よりもこれらの乗用車の価格が上昇するケースもあり得る。

一方、ベトナム政府が産業育成に注力する排気量が2,000cc以下の乗用車を対象とした特別消費税率は、2016年6月から2019年にかけて45%から20%~30% (排気量によって異なる) へと段階的に引き下げられる予定である。背景には、外資系自動車メーカーに対し、ベトナムがこれらの乗用車の販売先として有望なマーケットだと認識させることを通じ、同国への進出を促そうとするベトナム政府の思惑があったかもしれない。

今回の事例を踏まえると、TPPが経済やビジネスに与える影響を考える際には、合意内容のみならず、合意内容に関連する参加各国の政策も考慮すべきであろう。特に、TPPへの参加意思を急遽表明したインドネシアには、ベトナムにおける特別消費税に相当する奢侈税が存在する。このため、今後インドネシアがTPPに参加した場合、同国政府が奢侈税の中身をどのように変更させようとするのか注視する必要もあろう。


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