大和総研コラム

米中共同声明とCOP21の行方

  • 環境
  • 掲載日 : 2015年10月6日
  • 大和総研経済環境調査部 研究員 物江陽子

去る9月25日、ホワイトハウスで行われた米中首脳会談では、南シナ海問題や人権問題などをめぐり、米中の立場の違いが浮き彫りになった。数少ない合意点のひとつが、同日に発表された、気候変動に関する共同声明だろう(※1)

同声明で両首脳は、気候変動は人類が直面する最大の脅威のひとつであること、両国はこの問題の解決に重要な役割を果たすことを再確認し、国内対策を進め、二国間協力を強化する決意を示した。声明ではまた、昨年11月の気候変動に関する共同声明(※2)を再確認し、2度目標に留意しつつ、COP21の「成功」 (an ambitious, successful Paris outcome) を目指して協働することが盛り込まれた。

オバマ大統領は、昨年からの進捗として8月に公表した発電部門へのCO2排出規制の最終規則(※3)に触れ、次なる一歩として大型車両向けの世界最高水準の燃費基準の導入に取り組むことを表明した。一方の習主席は、GDPあたりCO2排出量を2030年までに2005年比60~65%削減する中国の削減目標について触れ、2017年に国家レベルで排出量取引制度を開始する計画を公表した。

気候変動問題について、二大国から前向きなコミットメントが出されたのは、COP21の「成功」に向けての大きな一歩となろう。さて、COP21は「成功」するのだろうか。

過去を振り返ってみると、COP3の際には、米国は京都議定書に署名したものの、議会の支持を得られずに批准できず、2001年には離脱してしまった。COP3に先立ち、米国上院は、途上国の参加がない限り、米国は気候変動条約に関するいかなる議定書にも署名すべきでないとする決議を全会一致で採択していたからである(※4)。そして、米国の離脱は言うまでもなく、京都議定書の効力低下を招いた。

さて、今回はどうなるだろうか。現オバマ政権は、気候変動対策に熱心であり、任期終了を視野にCOP21では合意作りに積極的に動くだろう。しかし、米国議会の意見は今も分かれている。仮に京都議定書のような、法的拘束力を持つ「パリ議定書」が成立したとしても、批准へのハードルはかなり高いだろう。

だからと言って、COP21は「成功」しない、などと言いたいわけではない。グローバルな気候変動対策の観点からは、野心的な目標を法的拘束力のある議定書に記し、全ての国が参加するのがベストシナリオだろうが、現実には、内容・形式ともにあまり厳しいものになると、国内事情から参加が困難な国も増える。つまり、「パリ議定書」としての合意だけが、COP21の「成功」を決めるものではないだろう。各国の交渉担当者たちは難しい舵取りを迫られることになろうが、合意がどのような形式のものになるにせよ、COP21が、2度目標と現実のギャップが少しでも埋まり、低炭素社会への転換が進む契機となることを期待したい。


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