大和総研コラム

非効率でも高い生産性

  • 国際
  • 掲載日 : 2015年7月29日
  • 大和総研ニューヨークリサーチセンター エコノミスト 橋本政彦

ニューヨークで生活するようになって早二ヶ月、少しずつ暮らしに慣れてくると同時に、日常生活を送るにあたって、日本での生活に比べて非効率、不親切なサービスが非常に多いことに気が付いてきた。

実際に筆者が体験した例を挙げると、新居に入居する際にケーブルテレビのセットアップを頼んだところ、担当者は何の連絡もなしに約束の時間から数時間遅れてやって来た。遅れたことに対しての謝罪は一言もなく、悪びれる様子も一切ない。同日に頼んでいた日系の引越業者が、30分程度の遅れに対して非常に申し訳なさそうにしていたことと対照的だったこともあり、「やはり日本はちゃんとしている」と感じさせられた。また、不動産や保険の契約などでも、「書類を送る」と言われてから何の音沙汰もなく、数回催促してようやく対応してもらえるということに何度も遭遇しており、各種の手続きが思うように進まないことなど日常茶飯事である。

一般的にアメリカのサービス産業の生産性は国際的に高い水準にあると言われるが、アメリカのサービス産業の生産性が高いとは、どうしても日本人の感覚からすると思えない。なぜ、これほどの非効率が存在するにもかかわらず、高い生産性を誇っているのだろうか。

一つの理由として考えられるのは、アメリカに住む人々の多くは、日本人が非効率であると感じるサービスの多くに対して、さして不満を感じていないということだろう。アメリカでは頼んだものが時間通りに来ないなどということはごく普通のことなのである。日本から来た駐在員でも、アメリカでの生活が長くなると、日本の何事にもきっちりとした習慣がむしろ窮屈に感じるようになるということをよく耳にする。つまり、アメリカに住む人々は、受け取るサービスに対して支払う対価、料金が過度に高いと感じておらず、その結果として、日本人からすれば決して効率が良いとは言えないようなサービスでも大きな付加価値が生み出されているのではないか。

アメリカは世界最大の経済大国であると同時に、先進国の中においては相対的に高い生産性を誇り、資本主義経済の成功モデルとして扱われることが多い。筆者にとってもある種の憧れの国であったアメリカは、実際に住んでみるとイメージとかなり異なる部分が多い。日本人がサービスに対して求める質が高すぎるのかもしれないと思う部分もあるものの、アメリカのサービス産業の生産性にはなおも大きな伸びしろがあると感じられる。


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