大和総研コラム

再認識される中国株式市場の特殊性とリスク

  • 国際
  • 掲載日 : 2015年7月22日
  • 大和総研経済調査部 主席研究員 齋藤尚登

買うから上がる、上がるから買うというバブル的な急騰となった中国株式市場は、証券当局による「場外配資」 (資金融通会社) のレバレッジ引き下げを契機に急落、一転して売りが売りを呼ぶ展開となった。上海総合株価指数は6月12日に5,166ポイント、年初来59.7%高 (2013年末比144.2%高) の高値を付けた後急落し、7月8日には3,507ポイントとピークからは32.1%の大幅調整となった。

この前後には政府主導の株価下支え策が矢継ぎ早に発表された。具体的には、①株式需給悪化を防ぐための新規上場取りやめ、②証券各社が1,200億元 (約2.4兆円) を拠出し、国内主要銘柄で構成される上場投資信託 (ETF) を買い支え、③信用取引で追証 (追加証拠金) を求めないなど株価下落圧力を軽減、④一時、全上場会社の半分が株価急落回避を目的に取引を停止、⑤保有比率5%以上の大株主等の株式売却を6ヶ月間停止、⑥政府系ファンドの中央匯金はETFを買い増しし、保険会社や各種ファンドは株式市場への投資を増額、国有企業は自社株買いを実施、など枚挙にいとまがないほどである。この他、株価指数先物取引における「悪意」のある空売りを禁止し、公安部による調査が行われるなどした。しかし、空売りに「悪意」と「善意」の区別があるのか理解に苦しむ。要は「株価下落につながることは許さない」ということなのであろう。

7月9日には、劉鶴・党中央財経領導グループ弁公室主任兼国家発展改革委員会副主任が「株式市場は問題ない」と発言したと報道されるなど、まさに、なりふり構わないテコ入れ策が実施された。劉鶴氏は、習近平総書記の経済ブレーンの中枢として知られるが、メディアへの露出はほとんどない人物である。

こうしたテコ入れ策の発動でひとまず安心感が出たこともあり、7月17日の上海総合株価指数は3,957ポイントまで反発した。ただし、マーケットは上にも下にも変動幅が大きくなるなど不安定化している。

今回の騒動で、少なくとも海外投資家は中国株式市場の特殊性と未成熟さ、それが故のリスクを再認識せざるを得ないであろう。特に、一時、全上場会社の半分が売買を停止するという異常な事態となったことには注意を要する。株価急落回避が目的であろうが、売ることも買うこともできないというのは、投資家の意向、あるいはマーケット機能を完全に無視したやり方であり、特に海外投資家の信頼を失いかねない。日本でも中国株を組み込んだ投資信託の購入・解約の停止が相次ぐなどの直接的な影響が出ている。さらに、大株主による株式売却の6ヶ月間停止は、その間、投資の「出口」の一つを塞いでしまうことを意味し、日本企業の投資戦略にも影響を与え得る。


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