大和総研コラム

米国企業の「カネ余り」は解消 ?

  • 国際
  • 掲載日 : 2015年7月10日
  • 大和総研調査本部 専務取締役 岡野進

米国の資金循環表によると、2015年1–3月期の非金融法人企業部門で資金余剰がかなり鮮明に解消している姿となった。米国の非金融法人企業部門はとりわけリーマン・ショック以降、大きな資金余剰状態であったと考えられるが、それが解消に向かうことは経済のバランス回復という点からは朗報だ。季節調整値、年率でみると、内部資金が1兆7,008億ドルに対して固定投資が1兆6,397億ドルとなっており、両者の差は611億ドルにまで縮小した。2008年7–9月期に固定投資の額が内部資金を下回りだして以来の両者の差の縮小だ。在庫投資が877億ドルあるので、これをあわせて考えると、非金融法人企業部門は内部資金で投資を賄えなくなってきている、つまり資金不均衡は解消して資金不足になりつつあるといえる。

資金不均衡解消の要因は、固定投資の増加であった。不均衡がもっとも大きかった2010年7–9月期では、固定投資は1兆1,925億ドル (季節調整値、年率) と低迷していた。この時の内部資金は1兆7,402億ドルであったので、5,476億ドルの資金余剰になっていた。内部資金の額はほぼ横ばいであったが、固定投資が増加したことによってバランスが回復した。

さて固定投資はさらに内部資金を超えて伸びていくであろうか。米国全体でみると、経常収支赤字であって、つまり資金不足経済になっている。企業部門が大きな資金不足になっていっても経常収支赤字が拡大しないようにするためには、家計部門の資金余剰が増加するか政府部門の資金不足が改善するかしないといけない。2015年1–3月期では、個人可処分所得 (同) は13兆2,854億ドル、個人貯蓄 (純、同) は7,264億ドルとなっており、個人貯蓄率は5.5%と健全性を保っている。一方、政府部門の純借入 (同) 、つまり財政赤字は5,796億ドルに達しており、リーマン・ショック直後よりかなり改善したとはいえまだまだ規模は大きい。引き続き改善の必要は大きいが、財政赤字の削減が順調に進めば経常収支を悪化させずに、その資金が企業部門に向かうことで、企業の固定投資を増加させることができるだろう。

それにしても、日本の企業部門の資金余剰はなかなか解消しそうにない。2015年1–3月期 (速報) では非金融法人企業部門の資金余剰幅は10兆1 773億円となっており、季節性はあるものの依然として大きな資金余剰が起きている。設備投資の活性化で不均衡が解消に向かうことが望まれる。


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