大和総研コラム

株主総会に出席できない本当の株主の存在

  • 消費 / 社会
  • 掲載日 : 2015年6月18日
  • 大和総研調査本部 常務執行役員 引頭麻実

今年も株主総会の時期がやってきた。日本取引所グループが公表している3月決算企業の株主総会開催予定日 (6月5日現在) をみると、今年の総会集中日は6月26日 (金) で、実に4割超の企業が株主総会を開く。次に多いのが6月25日 (木) で、約2割弱の企業が予定している。

一昔前の株主総会の課題といえば、総会日の集中や、総会が非常に短時間で終了していることなどが挙げられていた。しかし、今では、開催日は多少なりとも分散化され、企業によっては経営戦略等が説明されるなど、株主とのコミュニケーションの時間を十分かけるようなケースも散見されるようになってきた。ある意味で改革は進んでいる。しかしながら、この数年をみると、株主総会に対して指摘される課題の内容はやや様相を変えている。具体的には、議決権の行使について真剣に取り組めるような環境整備が強く望まれている。

2010年3月末、「企業内容等の開示に関する内閣府令」の一部が改正され、企業は株主総会における各決議事項について、議決権の行使結果を開示することが義務付けられた。総会決議の様子が見える化されるようになると、どのような形で機関投資家等が議決権を行使したのかについて関心が高まってくる。スチュワードシップ・コードもあり、機関投資家には従来以上に議案を吟味することが求められている。これらを背景に、機関投資家からは、招集通知から総会開催日までの期間が短く十分に議案の吟味ができない、といった声や、有価証券報告書を総会前に提出してほしい、といった要望が出てきている。いずれも、議決権行使に向けて、準備期間や資料の充実を望んでいる。実に理にかなった要望である。しかし、なぜ、このような要望に応えられないのか、ふと疑問が湧く。どうやら総会開催のための基準日設定に鍵がありそうだ。

日本の多くの企業では決算日を総会基準日として定款で規定している。会社法では、株主総会は基準日から3ヶ月以内に開催しなければならないとされており、その結果、様々な作業がタイトなスケジュールで執り行われることとなる。ここで、決算日から定時株主総会までの期間を国内外でみてみると、日本が約3ヶ月弱となっているのに対し、米国、カナダ、英国、ドイツ、フランスではいずれも4.4~5ヶ月程度と随分余裕がある(※1)。さらに、基準日に関する海外の規定をみると、例えば英国では、総会開催日の2日以内、フランスは3営業日前まで、ドイツは無記名株式では21日以内、記名株式では6日以内、そして米国では10日から60日以内とされているなど(※1)、日本のように3ヶ月という長い期間を置いていないようだ。海外では決算日を基準日として設定していないことが日本との大きな違いのように見える。

さらに、もう一つ大きな問題がある。日本では結果として基準日から総会開催日までの期間が長いため、この期間に新たに株主となっても、総会に出席できないことだ。一方で、基準日時点の株主であれば (実際には受け渡しがあるので決算日の3営業日前までとなるが) 、その後株式を売却しても株主として総会に参加できる。つまり、日本では総会に出席できない本当の株主が理論的には海外よりも多く存在することになる。

こうした問題を解決する一つの手段として、決算日以外を総会の基準日として設定するという方法がある。基準日変更の定款変更が必要なことや、新たな基準日設定によるコスト高というハードルはあるものの、現在の会社法の枠組みのなかでこれは実現可能である。

できるだけ多くの本当の株主が参加できる株主総会を実現すること。これも、コーポレートガバナンス改革の重要な要の一つである。

  • ※1経済産業省「持続的成長に向けた企業と投資家の対話促進研究会」報告書 (平成27年4月)

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