大和総研コラム

進展する、相続法制の見直し

  • 消費 / 社会
  • 掲載日 : 2015年6月16日
  • 大和総研金融調査部 主任研究員 堀内勇世

相続法制の見直しが法務省で行われている。法定相続人、法定相続分、遺留分、遺言などの相続に関する基本的な事項が、民法の「第五編 相続」というところで規定されているが、この「第五編 相続」の部分を中心に見直しが進められている。

具体的には、2014年1月から「相続法制検討ワーキングチーム」で検討が行われ、2015年1月には「相続法制検討ワーキングチーム報告書」がまとめられている。その後、2015年2月には、法務大臣より法制審議会に、「高齢化社会の進展や家族の在り方に関する国民意識の変化等の社会情勢に鑑み、配偶者の死亡により残された他方配偶者の生活への配慮等の観点から、相続に関する規律を見直す必要があると思われるので、その要綱を示されたい。」との諮問が発せられた。それを受けて、「法制審議会民法 (相続関係) 部会」が新設され、現在審議が進められている。

相続法制の見直しが法務省で行われ始めた背景には、最高裁の違憲判断を受けて行われた、非嫡出子の相続分に係る民法改正の際の議論が存在する。この民法の改正に際し、各方面から、法律婚を尊重する国民意識が損なわれるのではないか、配偶者を保護するための措置を併せて講ずべきではないかといった様々な問題提起がされた。そこで相続法制の見直しが検討されることになった。

「法制審議会民法 (相続関係) 部会」の具体的な検討事項は、その第1回会議の資料によれば、次のとおりである。

①配偶者の居住権の保護
配偶者の一方が死亡した場合に、残された配偶者が、それまで居住してきた建物に引き続き居住することをよりしやすくすることはできないか検討されている。
②配偶者の貢献に応じた遺産分割の実現
遺産の形成に対する配偶者の貢献の程度に応じて、遺産分割の際、取得額が変わるようにできないか検討されている。
③寄与分制度の見直し
遺産分割の際、例えば、一部の子のみが専ら被相続人の療養看護を行った場合にその貢献度を反映することはできないか検討されている。
④遺留分制度の見直し
遺留分 (一定の相続人のために法律上必ず留保されなければならない遺産の一定割合(※1)) についても見直しが必要ではないかと検討が進められている。
⑤相続人以外の者の貢献の考慮
例えば、相続人の妻が、被相続人 (夫の父) が経営する農業や自営業について、相続人である夫と共に経営に従事していた場合に、その貢献を考慮して遺産の分配を求めることができるようにすべきではないかとして、検討が行われている。
⑥預貯金等の可分債権の取扱い
現行法上、預金債権等の可分債権は、相続によって当然に分割され、原則として遺産分割の対象にはならないと解されているが、それでよいのかと検討されている。
⑦遺言
現行の遺言制度について、見直しを検討すべきところはないかとして、検討されている。
⑧その他
その他の事項も必要があれば検討するとされている。

現在、いつごろの改正法案の提出を目指しているのかなどのスケジュールについては、公表されていない。相続法制の見直しは難しい問題でもあるので、今後の紆余曲折もありうるが、今後の審議の動向には注意が必要である。

  • ※1『法律学小辞典[新版]』 (有斐閣、1994年) より

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