大和総研コラム

取締役会の実効性評価とその開示

ガバナンス・コード対応サポートのビジネス化
  • 消費 / 社会
  • 掲載日 : 2015年6月2日
  • 大和総研金融調査部 主任研究員 鈴木裕

先ごろ最終決定されたコーポレートガバナンス・コードには、様々な項目が含まれているが、上場企業であれば既に当然実施しているはずの項目も多い。また、方針等の策定・開示が求められる11の原則についても、企業側で一度しっかりと作っておけば、それ以後は簡単な見直しで済ませることができるものも多い。たとえば政策保有株式に関する方針 (原則1-4) や関連当事者間の取引の承認等の手続の枠組み (原則1-7) 、独立社外取締役の独立性判断基準 (原則4-9) などは一度策定すれば、当分の間書き換える必要はないだろう。

他方、毎年何らかの取り組みが求められる項目もある。主要な政策保有株式の中長期的な経済合理性や見通しを毎年、取締役会で検証し、その結果を対外的に説明すべきとされている (原則1-4) し、「取締役会は、毎年、各取締役の自己評価なども参考にしつつ、取締役会全体の実効性について分析・評価を行い、その結果の概要を開示すべき」 (補充原則4-11③) ことも求められている。これらに対応するために、上場企業の取り組みをサポートするサービスへのニーズが顕在化するかもしれない。

ここでは、取締役会評価(※1)について、どのようなものとなりそうか考えてみたい。求められているのは「分析・評価」と「結果の概要を開示」することだ。海外の事例を見ると、

分析・評価は、取締役や業務執行部門への質問票調査や聞き取り調査を行うようである。質問票は、たとえば取締役会の頻度・日時などが適切か、議題の資料・審議時間などは適切か、経営戦略の方向付けを適切にできたかなど多くの事項について“very good”を5点、“very poor”を1点とするなどの方法で数値化するものだ。わが国でも、取締役会評価用の質問票ひな形がいずれ出回るのではないだろうか。

開示事項については、国によって力点の置き方が異なり、次の二つの方法があるようだ(※2)。一つは、評価手法を中心に開示するパターンだ。「誰が」「何を」「どのように評価し」「評価成果物は何か」を開示する。たとえば、「取締役全員が」「取締役会全体の効率性を」「質問票への回答によって評価し」「評価概要レポートを作成した」と開示するものである。評価内容面にまでは踏み込まない。これは、評価システムが適切に設計されていれば、取締役会の自律性が発揮されるだろうと考えられるからだ。カナダの企業は、こうした開示をするようである。カナダ方式では、毎年の開示事項があまり変わらないので、企業側の負担感は小さいだろうが、読んでいてあまり面白いものではない。

もう一つのパターンは、評価内容と改善への取り組みを開示するものである。たとえば、評価の結果、取締役会議題が過多であり審議が不十分になる恐れがあるというのであれば、議題を重要な意思決定事項に絞り込むようにするという内容の開示を行うことになろう。英国はじめ欧州の国々では、このような開示が多いようである。

取締役会評価の質問票にどのような項目を列挙するか各社で異なるところもあるだろうが、コアとなる部分もあるはずだ。聞き取り調査の実施でも、共通しているところはあろう。また、開示の方法や様式はある程度統一されていた方が、利用者にとって便利だ。そこで、こうした分野では、何らかのコンサルティングサービスの利用が検討できる。各社で内製化するよりも安価に利用できるのであれば、わが国においても取締役会評価のサポートをビジネス化できるかもしれない。


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