大和総研コラム

官僚たちの夏と早い朝

  • 消費 / 社会
  • 掲載日 : 2015年6月1日
  • 大和総研エコノミック・インテリジェンス・チーム エコノミスト 長内智

本日6月1日は「衣替えの日」である。近年は政府や官庁を中心に民間企業でも「クールビズ」の開始を5月とするケースが増えており、一斉に衣替えが行われるような時代ではなくなっているが、この頃から半袖の通勤・通学者が増えるなど、夏が徐々に近づいていることを感じさせる時季となっている。ところで、今年の夏は、「クールビズ」を主導してきた官僚たちの朝が早くなるようだ。

具体的には、7月と8月の始業時刻を通常より1~2時間程度早い7:30~8:30とし、それに併せて終業時刻も繰り上げる。さらに、業務の効率化や16:15以降に会議を設定しないことなどを通じて、超過勤務時間の短縮を図ることとしている。これは、安倍首相の2月12日の施政方針演説に端を発しており、総務省が3月27日に公表した「『夏の生活スタイル変革』 (朝型勤務) に関する通知」において概要が明らかにされた。その後、政府はこの取り組みの通称を「ゆう活」 (ゆうやけ時間活動推進) と決定した。

昨年の夏まで2年間ほど中央省庁で働く機会のあった筆者の「ゆう活」に対する第一印象は、大きなサプライズというものであった。各省庁・部署ごとに労働環境は異なるが、中央省庁で働く国家公務員の働き方の特徴として、朝が少し遅く、残業時間が非常に長いことが挙げられる。しかし、「ゆう活」は、夏の期間限定とは言え、そうした役所文化を大きく変えることになる。そこで今回は、官民双方で働いた自らの経験を踏まえて「ゆう活」に対する所感を2つほど述べることとしたい。

第1に、「ゆう活」の目指す方向性は基本的に正しいと考えている。現在、日本では、労働環境の改善や労働生産性の向上などのために、「柔軟な働き方」の実現が重要なキーワードとなっている。こうした中、労働時間が非常に長く、いわゆる「ブラック企業」と揶揄されるような勤務実態の国家公務員が少なくないことを踏まえると、それを改善することの意義は大きい。当然、国家のために高い志をもって長時間勤務を全くいとわない人も多いと思われるが、非効率的な業務やいわゆる「国会待機」の運営などを見直して組織全体の効率性を高めるという視点に立てば、「ゆう活」の取り組みに賛同できるはずだろう。

第2に、長時間労働という中央省庁の慣習的な働き方に鑑みると、「ゆう活」で本当に超過労働時間が削減されるのかが疑問視される。すでに若手の官僚からは、上司から大量に降ってくる業務量の減少や「国会待機」の運営改善などが行われなければ、労働時間は大して変わらないという声が出ているようである。役所の現場感覚としては、幹部未満の職員が業務を取捨選択できるような環境にはないため、こうした懸念は至極当然だと言えよう。結局のところ、「ゆう活」を成功させるには、変革に対する幹部職員の強いリーダーシップが不可欠であり、さらに国会会期が延長される場合には政治家主導の「国会待機」の運営改善が焦点となろう。

すでに筆者は民間企業に勤める部外者であり、今後再び中央省庁で働く機会はないと思われるが、今年の夏に導入される「ゆう活」が元同僚たちの労働環境の改善につながることを心より期待したい。


このコラムと同じカテゴリの他のコラムを読む

年別

カテゴリ別