アメリカは、「人種のるつぼ」と言われることがあるが、必ずしもそうではなく、いまだに「サラダ・ボウル」の方がしっくり来る。ところが、料理に関しては「るつぼ」の中で融合が進んでいるようだ。
ニューヨークの食文化は世界中から持ち込まれて現地化し、新たな食文化が根付いているように思う。イタリア系移民がもたらしたであろうピザ、ドイツ系とされるプレッツェル、ユダヤ系がもたらしたであろうベーグルなどに加え、日本からの寿司もニューヨークの食文化に馴染んできている。移民が2世、3世と世代を重ねると現地化が進むように、食文化も現地化が進んでいると言える。
日本を代表する寿司は、ニューヨークにおいてごく一般的な料理になっている。 (やや怪しげなところを含めて) “SUSHI”という看板を掲げたお店はたくさんある。アメリカのスーパーの惣菜コーナーにも置いてある。有名な日本食というよりも、ピザなどと同様に日常的なありふれた食事の一つになったと言えるだろう。
今は枝豆が定着しつつあるのかもしれない。寿司とセットで提供されていた枝豆は、日系ではないレストランやスーパーの冷凍食品コーナーでも普通に見かける。大豆であるが、“Soybeans”ではなく、“EDAMAME”として定着している。冷凍食品は殻つきだったり殻が無かったり、塩加減のバリエーションもある。レストランでは、塩茹でしただけではなく、パスタの一部になったり、甘辛いソースがかけてあったりと、多様な料理の一部になってきた感がある。一種の健康食品から日常の食材として認知されてきたのだろう。この他には、“TOFU” (豆腐) 、“MATCHA” (抹茶) などもしばしば見かける。
そして最近は、“RAMEN” (ラーメン) 文化が急速に拡大している。お店が増えて、おいしいところもそうでないところもたくさんあり、安くはないが食べ比べできるということだ。店内の造りもバーのようなおしゃれなお店もあるし、カウンターのみの店もある。もうすぐ寿司のようにありふれた料理の一つになりそうで、楽しみである。
ラーメンと並ぶ日本人の国民食とも言えるカレーライスはまだだが、「出汁」も広がると予想している。アメリカで暮らし始めて欲しくなるものは、出汁、あるいはうま味成分だった。すでに“UMAMI” (うま味) という言葉は辞書に収録され、ハンバーガーとなり、広がり始めている。他にも日本で気づいていないものがあるはずだ。様々な食文化を受け入れてきた「外食のるつぼ」にいろいろ投げ込んでみると、日本から輸出できるものはもっと見つかりそうである。
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