大和総研コラム

コーヒーベルトの北端にて

  • 消費 / 社会
  • 掲載日 : 2015年5月19日
  • 大和総研経済環境調査部 主任研究員 町井克至

先日のゴールデンウィーク中に沖縄本島に滞在し、同島北部の本部町と名護市にまたがる八重岳山麓のカフェで、地元で収穫されたというコーヒーに出合った。コーヒー豆の栽培に適するとされる南北回帰線内の範囲は「コーヒーベルト」と呼ばれており、沖縄県は日本でコーヒーベルトに属する数少ない地域の一つである。世界4位のコーヒー消費大国(※1)でありながら、コーヒー豆のほぼ全量を輸入に頼る日本において、国内産コーヒー豆の味を楽しめるのは希少な経験だ。

沖縄県といえば観光関連の産業が盛んというイメージが強い。実際、沖縄県の観光消費額の総計は約5,685億円 (2011年度)(※2)であり、県内総生産約3.8兆円 (名目、2011年度)(※3)に対する比率は15%である。これは、2位の山梨県 (8.2%) を大きく引き離して全国1位(※4)の比率となっており、沖縄県経済において観光関連の産業は大きなウェイトを占める。

沖縄県の産業別の付加価値額を見ても、第一次産業の占める割合が0.4%、第二次産業が14.1%に対して、観光関連の産業を含む第三次産業が85%である。しかし、同県の労働生産性 (就業者1人あたりの付加価値額) は、全国の他の都道府県と比べて低い状況にある。全国平均が約494万円 (2012年) であるのに対して、沖縄県は約344万円であり、宮崎県と並んで全国最下位である(※5)。また、地域別の完全失業率についても、全国平均3.6% (2014年度平均) に対して、沖縄県は5.4%と最も高い(※6)。沖縄県全体の経済成長のためには、雇用を拡大するとともに、付加価値額のシェアが全国的に見ても高い第三次産業の労働生産性を向上することが必要になる。

沖縄は本州から距離のある離島という特性上、多くの資材や商品を域外からの移入に依存する。このため、例えば、本州では生産が難しいコーヒーなどを発掘し、沖縄独自の名産品として育てることができれば、生産活動そのものによる産業振興もさることながら、観光関連産業などへの寄与も見込まれる。これまで見落とされたり気づかなかったりしていた地域ポテンシャルを活用して新しい価値を生み出すという、沖縄県の「域内イノベーション」の実現である。国内産コーヒーなど、新しい沖縄名物によるさらなるおもてなしの登場に期待したい。

  • ※1International Coffee Organization “Historical Data on the Global Coffee Trade” (2015年5月14日閲覧)
  • ※2国土交通省観光庁「観光入込客統計」
  • ※3内閣府「県民経済計算」
  • ※4観光入込客統計の2011年度分 (平成23年4–6月期~平成24年1–3月期) は、2015年5月15日閲覧時点で集計済み都道府県が42であり、富山県、福井県、京都府、大阪府、福岡県は集計されていない。
  • ※5総務省・経済産業省「経済センサス–活動調査」
  • ※6総務省統計局「労働力調査」

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