大和総研コラム

予測が難しい5月7日の英国総選挙

  • 国際
  • 掲載日 : 2015年3月31日
  • 大和総研経済調査部 シニアエコノミスト 山崎加津子

5月7日の英国議会下院 (House of Commons、定数650議席) 選挙まであと5週間余りとなったが、選挙後の新政権の見通しは混沌としている。保守党と自由民主党の連立政権は財政健全化と景気回復の成果を誇る一方、最大野党の労働党は厳しすぎる緊縮財政で経済格差が拡大したと批判し、社会的弱者の救済を訴えている。中でも明確な政策の違いは、保守党がEU加盟継続の是非を問う国民投票を2017年に実施すると公約しているのに対し、労働党はこれに反対していることである。

ただし、各種世論調査において保守党と労働党の2大政党の支持率は34%程度で拮抗して優劣がつかず、どちらも単独で過半数の議席を得ることは難しいと予想されている。一方、前回2010年の総選挙で得票率を22.1%に伸ばし、第3勢力として目覚ましい台頭を見せた自由民主党は、連立政権発足後は政権内で埋没し、最近の世論調査での支持率は8%程度に低下している。今回の総選挙では同党のクレッグ党首が落選するとの観測もあり、党としての生き残りをかけた総選挙になると予想される。

自由民主党が失速したにもかかわらず2大政党の支持率が伸び悩んでいるのは、保守党にはUKIP (英国独立党) 、労働党にはSNP (スコットランド国民党) という新たなライバルが登場しているためである。右派のUKIPは1990年代から英国はEUから離脱し、外交、通商、農業政策などの分野で主権を回復するべきであると主張してきたが、2000年代半ば以降、EUからの移民が急増したことを背景に支持を伸ばしてきた。特に2014年5月の欧州議会選挙で、得票率26.8%ながら英国の第1党に躍進したことで注目された。一方、左派のSNPは名前の通りスコットランドの政党だが、2014年11月のスコットランドの独立の是非を問う住民投票で存在感を示した。同党の台頭で、これまでスコットランドを主要な支持基盤の一つとしてきた労働党が苦戦している。

実のところ、英国の総選挙は小選挙区制のみで実施されるため、2大政党に有利な選挙制度である。UKIPは世論調査での支持率は15%程度と高いが、獲得議席数の予想は5議席程度にとどまる。SNPは支持率5%程度ながら、地方政党の強みを発揮して50議席程度を獲得し、自由民主党を抜いて第3党となると予想されているが、2大政党の地位を脅かすには至らない。とはいえ、小政党が複数台頭することで、保守党、労働党の議席数はともに280議席程度となり、過半数の326議席を大きく下回ると予想されている。

自由民主党は総選挙で第1党となった政党と連立協議をするとしているが、それが保守党、労働党いずれでも、2党の連立政権だけでは過半数の議席に達しない可能性が考えられる。一方、UKIPとSNPはどちらも政権入りする意思はないとしているが、SNPは労働党政権との閣外協力の可能性までは否定していないとされる。今回の総選挙では、新しい議席配分が決まったあと、どのような連立政権が可能となるかが最大の注目点である。


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