大和総研コラム

国際的な保険資本規制の動向

  • 国際
  • 掲載日 : 2015年2月23日
  • 大和総研金融調査部 研究員 菅谷幸一

世界金融危機後の国際的な金融規制改革の流れの中、銀行に対する規制強化に歩調を合わせる形で、保険会社の国際的な資本基準の策定が進められている。保険会社の資本規制については、各国・地域 (日本、米国、欧州など) で制定されてきたが、銀行のバーゼル規制のような国際的に統一された資本基準はこれまで存在しなかった。保険事業は、もともと地域性が強く、統一化が進まなかったものと指摘される。しかし、金融危機の経験 (特にAIGの事例) を踏まえて、国際的に整合的な資本基準の確立が不可欠であると、各国当局間で判断されたと思われる。

現在策定が進められている国際的な保険資本基準は複数あり、これらは、①G-SIIs (グローバルなシステム上重要な保険会社) を対象とするもの、②IAIGs (国際的に活動する保険グループ) を対象とするもの、の2つに分けられる。①G-SIIsは、G-SIFIs (グローバルなシステム上重要な金融機関) の保険会社版にあたるもので、システミック・リスクの大きい保険会社と位置付けられる。一方、②IAIGsは、一定の海外事業活動および事業規模を基準に選定 (ただし、監督当局の判断により最終決定) され、適用対象がより広範になる (IAIGsにはG-SIIsが含まれる) 。なお、現時点では日本からG-SIIsは選定されておらず、また、IAIGsは今後選定される(※1)

①G-SIIsを対象に適用される資本基準は、 (1) G-SIIsのシステミック・リスクを抑制するための「資本の上乗せ規制 (HLA) 」と (2) HLAの土台となる「基礎的資本要件 (BCR) 」である。また、②IAIGsに対しては、「保険資本基準 (ICS) 」(※2)が適用される。BCRは2014年11月に承認されており、HLAは2015年12月までに、ICSは2016年12月までに最終化される予定で、これらは2019年1月から適用される見込みである。

BCRは、簡易性と比較可能性に重点が置かれた結果、ALMや分散効果などがリスク評価に十分に反映されない作りとなっている。それを踏まえ、ICSはよりリスク感応度の高い、経済価値ベースの資本基準となる見込みで、将来的にBCRと置き換えられる予定である。

日本でも、将来的に経済価値ベースの健全性規制を導入することとされているが、具体的な時期や枠組みは定まっていない。金融庁は、国際的な検討の動向を踏まえつつ、検討作業を行っていく方針で、国際資本基準の動向が大きく関わってくるものと思われる。保険会社は、規制や他社の動向を見ながら対応することになろうが、単なる規制対応に留めず、リスク管理の高度化を自発的に進めていくことが望ましい対応といえよう。

  • ※1G-SIIsは、毎年更新され、毎年11月にFSB (金融安定理事会) により公表される (2014年11月時点の該当保険会社は全9社) 。また、IAIGsは、監督カレッジ (各保険グループを監督する各国・地域の当局から構成される集合体) により選定され、全体で50グループ程度となる見込み。
  • ※1ICSは「国際的に活動する保険グループの監督のための共通の枠組み (ComFrame) 」の一部として策定されている。ComFrameは、この資本基準の他、ガバナンス、リスク管理 (ERM) 、報告・開示に関する要件などにより構成される包括的な枠組みとなる。

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