大和総研コラム

原油安はフィリピン経済にとっていい事尽くし?

  • 国際
  • 掲載日 : 2014年12月22日
  • 大和総研経済調査部 エコノミスト 新田尭之

最近、原油価格の下落が実体経済や金融市場に対してどのような影響を与えるのかといった話題がメディアをよく賑わせている。実際、WTI原油先物価格は今年の6月中旬から7月上旬にかけては1バレル=100米ドル前後の水準で推移していたが、12月中旬現在は同55米ドル付近まで沈んでいる。この流れに乗り、以下ではフィリピン経済が原油価格の下落から受ける影響を考察する。

まず、インフレ圧力の低下がプラスの影響の1つとして考えられる。統計機構によれば、2014年7月と8月のインフレ率は前年比+4.9%であり、中銀が定めたインフレターゲットの上限である+5.0%に迫るほどであったが、11月には同+3.7%まで低下している。これには、フィリピンは自国で消費する原油の9割以上を輸入に頼っているため、原油価格の下落がインフレ率に直結しやすい経済構造となっている点も関係したとみられる。中銀はインフレ圧力を抑えるため、今年の7月と9月に政策金利を0.25%ずつ引き上げたが、現在のようにインフレが比較的抑制されている状況が続けば、景気の底上げを目的とした金融緩和を進める可能性も考えられる。

一方、フィリピン経済は原油価格の下落によってマイナスの影響を被るリスクがある。具体的には、中東の産油国から受け取る国外送金が減少する可能性である。

もとよりフィリピン経済は海外送金に大きく依存している。中銀と統計機構によれば、2013年にフィリピンが受け取った国外送金は、銀行と送金業者を通じた部分だけでも対名目GDP比で8.4%に達する。国外送金はフィリピンの実質GDPの約7割を占める個人消費の牽引役と表現しても過言ではない。

また、国外送金を国・地域別に見ると、2000年頃からサウジアラビアやUAEといった中東の産油国の存在感が高まっており、中東諸国からの国外送金は2013年には全体の2割弱までに達している。この背景としては、これらの国々が原油価格の高騰で稼いだ資金を元手に高層ビルや空港などのインフラ設備を建設しようとした際、現場の労働者として多くのフィリピン人を雇用したことが挙げられる。こうした産油国は多額の資金を蓄積しているため、建設プロジェクトの多くはしばらくの間、計画通りのペースで進められると見込まれる。しかしながら、原油価格の低迷が長期化すれば、プロジェクトの一部が中断、あるいは停止に追い込まれることもあり得る。その場合、プロジェクトに従事するフィリピン人労働者の雇用環境は悪化し、フィリピンへの国外送金も弱含むことになる。

総じて、原油価格の下落は基本的にフィリピン経済への追い風となると思われるが、状況次第ではその勢いが弱められる可能性がある点にも留意すべきであろう。


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