世界のマネーフローがどのようになっているのか?投資家や金融系の会社に勤める人々などは多大な興味を持っているのではないだろうか。しかし、この全容を把握することはなかなか難しい。ただし、一部であればこの内容を示すことが可能であると思われる。このコラムでは、世界のマネーの動きの一部をBIS (国際決済銀行) の国際与信残高統計を用いて、見ていきたい。
この国際与信残高統計は世界31ヶ国・地域の銀行の国際与信残高を相手国・地域別に見たものであり(※1)、各国・地域の銀行がどの国・地域にどれだけ与信(※2)を行っているかを把握することができ、世界のマネーフローを見るには有用な統計である。
世界金融危機 (2008年) から足元 (2014年4月~6月) まで国際与信の動向を与信受入側と与信側 (銀行側) から見ると、以下の4点を指摘できる。
(与信受入側)
(与信側 (銀行側) )
上記の点で興味深いことはオフショア向け与信の増加である。香港、シンガポールは別だが、ケイマン諸島はタックスヘイブンとして多くの企業が法人登録のみを行い、実際の企業活動は別の場所で行っている。
ケイマン諸島に法人登録をする企業の役員等が実際に所在する国 (≒企業が実際に活動する国) を見ると、中国と香港の企業が全体の8割を占める。香港とシンガポールについても同様に見ると、中国と香港の企業が全体の3割を占める。まとめると、オフショアに登録する企業の半数は中国と香港の企業になり、オフショア向け与信の大半が間接的に中国と香港の企業に向かっていると推測される。直接的な中国向け与信と合わせれば、世界金融危機から足元までの世界のマネーのおおよそ半分は、直接的、間接的 (オフショアを通じて) に中国 (含む香港) へ向かったと思われる。
10月に、米国ではFRBが量的緩和第3弾に伴う資産買い入れを終了させ、日本では日銀が量的・質的金融緩和の拡大を決定した。欧州ではECBによる量的緩和の導入が囁かれている。このような中で、今後も中国 (含む香港) にマネーが流入するのか、注目していきたい。
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