大和総研コラム

TLAC (G-SIBsの追加規制) の落とし穴

  • 経済
  • 掲載日 : 2014年11月19日
  • 大和総研金融調査部 主任研究員 鈴木利光

11月10日、金融安定理事会 (FSB) は、注目されていた、グローバルなシステム上重要な銀行 (G-SIBs) の総損失吸収能力 (TLAC:Total Loss-Absorbing Capacity) の市中協議文書を公表した。

TLACの内容については、11月12日付の大和総研レポート(※1)があるのでここでは割愛するが、これに対する評価としては、①バーゼルⅢの規制資本 (バッファーを除く) にTLAC適格が認められたこと、②日本の預金保険制度の強靭性にかんがみ2.5%以上に相当するTLACのボーナスが付与されたこと、そして③持株会社による発行であればシニア債にTLAC適格が認められたことの3点をもって、日本のG-SIBs (3行) にとっては今後の対応に関する目途が立ったということが可能であろう。

また、「レバレッジ比率6%以上」という追加規制についても、分子はバーゼルⅢにおけるTier 1ではなくTLACで足りるということから、少なくとも日本のG-SIBsにとっての負担は限定的と言えよう。

しかし、市中協議文書には、一点、日本のG-SIBsにとって「落とし穴」とでも言ったらいいのか、不明瞭な項目がある。

それは、「グループ内TLAC」 (“Internal TLAC”) の一定水準以上の維持である。

グループ内TLACとは、端的に言うと、「重要な子会社」への出資・融資等である。

この項目は、クロスボーダーな破綻処理の円滑化を趣旨としている。

市中協議文書は、仮に「重要な子会社」自身に対して通常のTLAC規制 (その「重要な子会社」のリスク・アセットの16%から20%以上のTLACの維持) が適用された場合、そこで所要水準として算出されたTLACの75%から90%以上に相当する金額のグループ内TLACの維持を、その「重要な子会社」自身に求める旨提案している。

「75%から90%以上」のレンジ内でどの水準が採用されるかは、「重要な子会社」のホスト国とホーム国の協議により決められる。

これは、持株会社が保有しているTLACを「重要な子会社」に分配することや、「重要な子会社」自身による規制資本の発行により達成される。

「重要な子会社」自身が発行した規制資本をグループ内TLACに算入するためには、ホスト国に実質破綻時のベイルイン (ヘアカット及び普通株式転換) を実施する権限が認められることが求められている。

この項目が日本のG-SIBsにとってどれだけの影響をもたらすのかについては、報道等では言及されていないが、2019年以降の実施に向けて、今後深く検証されていくはずである。


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