大和総研コラム

香港の試練

  • 国際
  • 掲載日 : 2014年10月9日
  • 大和総研経済調査部 シニアエコノミスト 齋藤尚登

「滬港通」と呼ばれる、中国・香港双方向の株式投資開始に向けた事前準備が着々と進められている。「滬港通」実施後は、「セントラル占拠」で揺れる香港市場のテコ入れのため、中国政府が中国の金融機関に香港株購入の指示を出すのではないか、という穿った見方もある。香港株高を演出することで、今回の事態の影響は軽微との雰囲気を醸し出すのである。

しかし、香港には飴 (経済的なベネフィット) だけでは満足できないという人々が増えているのも事実である。それが、2017年の行政長官選挙方法の民主化や行政長官の辞任を求める大規模デモ「セントラル占拠」の発生である。

香港の試練の本質は、大規模デモによる影響が、交通渋滞、商業の休業、観光客の減少、株価下落など、経済にダメージをもたらしていることではない。中長期的に死活的な問題となりうるのは、「セントラル占拠」への対応方法である。香港政府が、対話に依らない、自制を失った行動をとれば、香港への評価や魅力は大きく低下することになる。

一国二制度の下、香港には高度な自治が認められているが、トップの行政長官は中国国務院総理 (首相) によって任命され、選挙制度的にも親中派しか選ばれない。それでも、中国の意思を伝達するだけの傀儡では決してない。香港の民意を中国に伝える役割も極めて重要であろう。しかも、その民意が割れていることが対応の難しさに拍車をかけている。社会、経済の安定を重視する人々は、「セントラル占拠」に反対を唱えている。

今回の試練を乗り切るキーワードは、自制、多様化する民意との対話、 (香港から) 中国への伝達であり、香港の真価が問われている。


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