大和総研コラム

手段から目的になった「鳥獣管理」

  • 環境
  • 掲載日 : 2014年8月13日
  • 大和総研環境調査部 主任研究員 大澤秀一

人間は、同じ生態系の一員としてシカ、イノシシ、サルなどの野生鳥獣と共存しており、また、これらを食肉や工芸品、医療、科学等に幅広く利用している。この事実は将来も変わることはないだろう。

最近、日本の山野などに生息している野生鳥獣との“付き合い方”を定める「鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律 (通称、「鳥獣保護法」) の一部を改正する法律」が公布された (2014年5月30日) 。公布から1年以内に、「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」 (以下、「鳥獣保護管理法」) に改められて施行されることになっている。

気になるのは、法律の目的に、「鳥獣の管理を図ること」が加えられることである。ここでいう「管理」は「保護」と逆の意味で、生態系や人間活動にとって好ましくない特定の鳥獣を捕獲 (狩猟又は殺傷) することである。生物多様性の保全を目的にした科学的根拠に基づく個体数や生息地の適切な管理 (マネジメント) という意味ではない。現行の鳥獣保護法において「管理」は、鳥獣による生活環境、農林水産業又は生態系に係る被害を防止する目的を達成するための手段だったものを「目的」と位置付けることになり、人間と野生鳥獣との付き合い方に大きな転換をもたらすものといえる。

もっとも、議案を提出した内閣 (所管は環境省) の説明には一定の合理性があり、法改正の必要性は認められる。「近年、ニホンジカやイノシシなどの鳥獣においては、急速な生息数の増加や生息地の拡大が起きており、希少な植物の食害等の生態系への影響や、農林水産業・生活環境への被害が、大変深刻な状況となっています。一方、鳥獣捕獲に中心的な役割を果たしてきた狩猟者が減少・高齢化しており、捕獲の担い手の育成や確保が課題となっています。」と背景が説明されている。このため、「積極的に鳥獣を管理し、また、将来にわたって適切に機能し得る鳥獣管理体制を構築することが必要な状況になっており」、そのためには「新たに鳥獣の管理を図るための措置を導入するなど、鳥獣の生息状況を適正化するための抜本的な対策を講じるために、所要の改正を行うこととしたものです。」としている(※1)

鳥獣保護管理法の詳細については他の専門家の解説に譲るが、捕獲の効果を上げるために指定管理鳥獣捕獲等事業を創設すること、狩猟者の体制づくりのために認定鳥獣捕獲等事業者制度を導入すること、生活環境の被害の防止のために住居集合地域等で麻酔銃による捕獲等ができること、などが主な改正点である。

狩猟等の制度を強化して、鳥獣による生活環境、農林水産業又は生態系に係る被害を防止することにはやむを得ない面もあるが、人間は身近に生息している野生鳥獣と共存し、これらを山野の恵みとして利用していることも、改めて意識する必要があるだろう。


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