大和総研コラム

「定着節電」のインパクト

  • 消費 / 社会
  • 掲載日 : 2014年8月5日
  • 大和総研環境調査部 研究員 平田裕子

先日、社内の休憩スペースの照明が「点いて」いて眩しくて違和感を覚えた。最近は「消えて」いることが当たり前になっていたようだ。そういえば、以前は「見た目が悪い」と敬遠されていた照明の間引きも、駅構内や商業施設、オフィス等で普通に見かけるようになった。

日本の電力需要の推移をみると(※1)、東日本大震災の起きた2011年度は2010年度比5.1%低減し、その後の2012年度、2013年度ともに2010年度比6.0%減の水準を維持している。東日本大震災後に政府から発表された節電要請により、全国各地で慌ただしい対応が図られたが、節電が継続されている状況がみてとれる。生産・営業活動の抑制など負担を強いられている現場があることを忘れてはならないが、前述の照明のように時間とともに定着した節電対策も多くあると思われる。

2014年5月に公表された「2014年度夏季の電力需給対策について」 (電力需給に関する検討会合) には、2014年度夏季の需要想定にあたって「定着節電」として2010年度夏季比1,435万kWの需要減が織り込まれている。これは、電力会社のエリアごとに、前年度の節電実績に“節電継続率”を乗じて算出した数値の合計である。“節電継続率”は、直近のアンケート(※2)で2014年度夏季も2013年度夏季と同等の節電を継続することを示した需要家の割合(※3)であり、エリアにより異なるが8~9割程度である。ちなみに、継続の動機としては、「コスト削減につながるから」との回答が最も多く、引き続き政府の節電要請が行われていることが背景にあるものの、節電のコストメリットを実感したという需要家の本音も垣間見られる。

また、電力需給バランス (9電力会社)(※4)をみると、2010年度夏季実績 (ピーク需要日) における3,483万kWの原子力発電による供給分を、2014年度夏季 (8月) 見通しでは、1,435万kWの「定着節電」、1,153万kWの火力増強、776万kWの予備率低下分などで補う構図になっている。「定着節電」が日本の電力需給安定に大きな役割を果たしている。新規の発電設備投資の抑制に貢献したと言い換えることもできよう。

輸入燃料費の増加など電力価格の再値上げへの懸念が強まるなか、2013年から段階的に始まっている電力制度改革では、節電分のネガワット取引の手法が議論されている。需要側の柔軟な対応を引き出すことができれば、経済合理的な電力供給が可能になり電力価格の下落に寄与するだろう-そうした仕組み作りに期待したい。


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