大和総研コラム

ミャンマーの通信事情など

  • 国際
  • 掲載日 : 2014年6月27日
  • 大和総研顧問 小笠原倫明

6月に初めてミャンマーに出張する機会を得たので、その際同国の通信事情等について感じた事を述べてみる。但し、殆どヤンゴンやネピドーの表通りを巡ったのみなので、それこそ「通り一遍」の説明になるかもしれないがお許し願いたい。

同国最大の都市ヤンゴンの街の印象は大変好ましい。道路は思いの外清潔であり、街を歩く市民の方々にも、我々外国人を警戒する気配は見られない。この印象は、ヤンゴン及び首都ネピドーの中央郵便局で、職員の方々の説明を伺った際も、全く裏切られることはなかった。弊社は日緬政府間のミャンマー郵便改善プロジェクトのお手伝いをさせて頂いているが、日本政府の方に伺っても「ミャンマーの郵便現場の方々は、我々のアドバイスに真摯に耳を傾けて頂き、直ぐに改善措置を採って頂いている。」由。

電気通信について言えば、これも思いの外スマートフォンが普及している。ヤンゴン空港のロビーで、片肌脱ぎの袈裟を着たお坊様がスマホに耳を当てているのを見て「仏教国ミャンマーならでは」との印象を持ったのはともかく、ヤンゴン最大のパゴダ (仏塔) の隅で座り込んでいる中年男性、中央郵便局近くの路上で露店を開いている中年女性、その近くに立つ初老の男性、こうしたいわば「普通のおじさん・おばさん」がスマホを取り出す姿には正直驚いた。

但し、現在国内の電気通信事業を独占するミャンマー郵電公社 (MPT) のサービスに関するヤンゴンでの評判は、必ずしも芳しくない。例えば「スマホといっても、回線品質が良くないので、データを送受信する際には街中の無料WI-FIを使っているようだ。」「若い方は、最近出来たコーヒーショップの無料WI-FIを利用してFacebookを使っている。」「動画を受信する事は困難。ショートメッセージでさえなかなか送信できない事がある。」

また、固定回線についても、「ミャンマーへ進出した日本企業の回線の申込・開通には大変な手間と期間を要する。品質も不安定。MPTは国営企業故、よく『予算が無いので』と仰る。」「クレジットカードが使える店を選んだのに、回線状況が悪くてカードの信用照会ができず、結局出席者の所持金を集めて、何とか支払をしたことがある。」「今年からサービスを開始する予定のノルウェーとカタールの携帯事業者も、MPTのインフラが貧弱なので頭を抱えているようだ。」

最後のコメントには説明を要する。携帯電話の通信は全て無線で行われると思う方もいらっしゃるかもしれないが、携帯電話の無線区間は、端末機とそれをカバーする基地局 (ビルの屋上や鉄塔に設置) との間、半径数百m~数km内のみ。基地局から先は固定通信事業者 (日本ではNTT東西など。ミャンマーではMPT。) の光ファイバなどを利用するのが一般的。従って、MPT回線が容量不足あるいは不安定では、新規の携帯事業者のサービスにも支障を生じる恐れ有り。

ミャンマーの2013年末の携帯電話加入数は683万。人口普及率は13%。他のASEAN加盟国は、ラオスの66%を除き、100%超(※1)。ミャンマー政府は今後2年間で普及率80%を達成するとの目標を掲げている。昨年、外国2社に免許を与え、また携帯電話の利用に必要なSIMカードの価格を大幅に引き下げたのもそのためだが、MPTの基本的なインフラの拡充強化も大きな課題と思われる。また、携帯電話のみならず、日本をはじめミャンマーに進出する外国の企業にとっては、ビジネス拠点の固定回線を、安定した品質で確保することが不可欠である。

昨年、日本政府の無償資金協力により、ネピドー、ヤンゴン、マンダレーの三大都市 (間) の通信網の緊急整備が行われた。これは昨年12月のSEA Games (いわゆるASEAN版五輪) のミャンマー開催 (ネピドーが主会場) 、及び本年ミャンマーがASEAN議長国を務めることに配意して行われたものと聞く。今回ネピドーで、関連の施設を見学、説明を頂く機会を得たが、少なくともネピドーにおいては、携帯電話やインターネットを快適に利用できる環境が整備されたように思われる。SEA Gamesに集まったASEAN各国の関係者・報道陣から好評を得、ミャンマー政府としても面目を施した由。援助国の日本、実際に整備に携わった日本企業としても同様であろう。しかし、人工の首都で居住者が少ないネピドーはともかく、700万といわれる人口とビジネス拠点が集中するヤンゴンについては、残念ながら顕著な効果が現れているようには見えなかった。

従って、今後日本政府の一層の支援が求められる可能性有り。また、関連して、現在、MPTは、我が国の通信事業者との提携協議を進めていると報ぜられている。協議の内容・帰趨は知る由もないが、もし我が国事業者がMPT引いてはミャンマー全体の通信網改善を担う機会があれば、それに期待するところも大と思われる。

翻って、先般、弊社も、日緬両国政府のお力添えを得て、ミャンマー中央銀行のICTインフラ構築を受託する契約を締結した。ミャンマーにおいて、社会の基幹をなす業務をオンラインで行うものとしては、おそらく初めての試みであろう。

ここに述べた以外の分野でも、今後、日本政府や日本企業が、ミャンマー社会の様々なシステムの近代化、電力をはじめとする各種インフラの高度化に貢献する事ができれば、日緬関係のみならず日本自身の将来にとっても極めて有意義と思われる。ミャンマー国及びミャンマー国民の方々に対する親近感とともに、我が国がなすべき事が多いのを感じさせられた出張であった。


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