大和総研コラム

株式の取引時間と取引量

  • 経済
  • 掲載日 : 2014年6月13日
  • 大和総研調査本部 専務取締役 岡野進

世界ほぼ共通の現象と思われるが、株式の現物取引市場においては、日々の取引開始直後と取引終了間際に取引が集中する傾向がみられる。実際の取引データ (2014年4月、日経225銘柄) でみて、15分毎の時間帯別出来高を平均すると、最初の15分と最後の15分で、それぞれ1日出来高の14.2%と14.5%、合わせて28.7%が成立していた。また後場の開始直後15分が5.2%といくらか高い。その他の取引密度が低い時間帯では15分間刻みの取引量は全体の3%前後となる。同じく、ニューヨーク市場のケース (NYダウ構成銘柄のうちニューヨーク取引所上場27銘柄) では、取引開始時間直後15分で17.0%、取引終了前15分で15.4%と東京よりさらに、取引開始直後と取引終了直前に取引が集中する傾向があった。密度の低い時間帯では15分刻みで2%前後である。

これが意味していることは、取引開始と終了というイベントに付随して厚みのある取引が行われているのであって、取引時間を拡大してもその他の時間帯の比較的密度の薄い部分が増加するのにとどまる可能性が高いということである。

次に取引時間の拡大によって取引量が増えるかどうか、取引の性格を2つのタイプに分けて考えてみたい。1つめのタイプは1日のうちに売り買いを繰り返す取引、つまりデイトレーダーと呼ばれるような個人、そして最近勃興してきた超高速売買を行う運用業者や証券会社のディーラー部門の売買がこれにあたるだろう。こうした取引は取引時間が長くなればある程度は増加する可能性がある。一方で、2つめのタイプとして、中長期的な観点から投資を行う個人投資家や市場環境を考慮、反映しながらポートフォリオ運用する機関投資家の取引があげられるだろう。この場合には、1日のうちに売買を繰り返すことはないから、取引時間が長くなっても売買を増加させる事情にはない。時間の拡大に伴って価格変動が大きくなった場合に希望する価格での注文が成立する場合があるかもしれない。しかし、その取引は翌日以降の取引の先食いとも言える。つまり、後者のタイプの取引は時間拡大によって増加することは期待できないだろう。

1日のうちに売買を繰り返すような取引が増加することは、市場に流動性を与えるという効用がある。しかしそれは、企業の資金調達 (自社株買いという負の資金調達もふくめ) と投資家の株式投資をマッチングさせていくための適正な価格形成を助けるという場合に経済に対する効用があるのであって、厚みを伴わずに単純に短期売買だけが増加するのであれば、資本市場の機能強化につながるとは言い難い。取引時間拡大には、取引量への影響以外にも論点があるが、慎重な検討が必要であろう。


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