大和総研コラム

ビットコイン騒動にみる金融イノベーションの課題

  • 消費 / 社会
  • 掲載日 : 2014年3月6日
  • 大和総研金融調査部長 保志泰

昨年あたりから注目が高まった「ビットコイン」は、取引所運営会社の経営破綻を受けて新たな局面に入ったように見受けられる。すなわち、これまでは原則として法的規制が課されない決済手段として注目され拡大してきたが、今後は各国において、何らかの規制の網を被せる検討が始まることが必至となり、ビットコインの拡大スピードにブレーキがかかる可能性がある。

ビットコインが通貨としての性質や機能を具備しているかどうか、という点については議論が分かれるだろう。しかし、少なくとも決済 (交換) 手段という点では利用者ニーズに応える優れた機能を提供 (とくに低コストで) しているわけであり、金融の世界における“イノベーション”と言っても過言ではないかもしれない。不幸なのは、早くから投機の対象になってしまった (あるいは、そういう隙があった) ことだろうか。

「金融」サービス産業は、いわゆる規制産業であるが、法的規制のみならず伝統や常識においても様々な制約条件が存在してきた。だからこそ、それを打ち破るイノベーションの余地がたくさんあると言える。さらに、金融はIT (情報テクノロジー) との相性も良いと言われ、イノベーションが生まれやすい環境にある。

一般論として、現代におけるイノベーション、とくに広義サービス産業におけるそれは、旧来の伝統や常識を打ち破って始まるもの、と言えるだろう。今の日本に当てはめれば、“岩盤規制”を打破することが経済成長への足掛かりとなるイメージである。ただし、伝統に対する挑戦ということになれば、旧来勢力から大きな反発を受けるだろうし、何らかの問題が起きれば過剰な批判に晒されることもあり得る。社会全体として、未知のものでも可能な限り受け入れようとする姿勢がなければ、行政を含め様々な力に抑え込まれてしまうのが落ちである。

昨今話題の「クラウドファンディング」も、ITの発達が背景にある新たな金融サービスである。もともと小口の寄付的要素も含む行為に対して、従来型の強い規制の網をかけることはそぐわないとする意見が多いと思われる。昨年の金融審議会の報告を踏まえて、金融商品取引法の改正が行われることになるが、報道の範囲では、比較的自由度を維持して過度な規制はかけない見通しだ。

周知のとおり、リーマン・ショック以降、金融規制は強化に向かう過程にある。「金融」というものは、一定の規制をかけないと自己増殖して、バブルの発生と、その後の破裂をもたらすというのは歴史の教訓である。しかし、その考え方を延長してイノベーションを阻害することは、必ずしも人々の利益にはならない。ただし、新しいサービスに大きな自由度を与えるためには、ユーザー側の金融リテラシーが向上して、一定の自己責任を負える環境の醸成が条件になるかもしれない。


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