2013年の上海銀行間取引金利 (SHIBOR) は2度の急上昇局面を経験した。1度目は6月初旬から中旬にかけてであり、7日物は4%台から6月20日には11.0%へ急上昇し、2度目となる12月18日からクリスマス前にかけては、同様に4%台から8.84% (12月23日) へ上昇した。
背景としては、①金融当局は銀行システム外で調達された資金 (いわゆるシャドーバンキング) が、貸し倒れリスクの高い業績不振の中小企業や期待収益率の低いインフラプロジェクト、不動産に向かっていることに不快感を表明するために、理財商品 (財テク商品) の償還で資金需要が高まる四半期末の金利上昇を放置した、②6月には米国の量的緩和の早期縮小懸念が台頭し、12月17日~18日の米連邦公開市場委員会 (FOMC) では量的緩和の縮小が決定されるなど、先進国マネーの自国回帰への懸念が大きく高まった、の2つが考えられる。前者はシャドーバンキング対策、後者はグローバルな資金移動の変化である。
6月の時点ではシャドーバンキング問題が大きくクローズアップされており、個人的にもそれへの対策の可能性が高いとみていた。しかし、 (1) その後、6月~7月の外国為替資金残高 (中国人民銀行が買い入れた外貨の残高) は純減となり、中国から資金が流出していたことが明らかになった (8月~11月の外国為替資金残高は純増) 、 (2) 6月は主な新興国の株価が全面安となるなど、中国固有の要因ではなく、新興国全体にまたがる要因であった可能性が高い、 (3) 12月の銀行間取引金利の急上昇は、米国が量的緩和の縮小を発表した時期と完全に合致する、ことなどから、現在ではグローバルな資金移動の変化、もしくはその思惑が、金利急上昇の主因であったと判断している。
従来、中国は自由な資本移動を厳しく制限しているが故に、世界的な短期資金移動の影響をさほど受けないとされてきた。しかし、「偽輸出」問題 (架空の輸出によりホットマネーが中国に流入) を取り上げるまでもなく、こうした定説は既に崩れている。
中国人民銀行には、国内の季節的な資金需要への対応に加え、グローバルな資金移動の変化にも配慮すること、さらには、金利安定のためにオペレーションの柔軟性や精度を上げることが求められているのである。
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